ポテトの王者カルビー、鷹揚な社風を改革し収益力激変、成長への新たな種まきも

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そんなカルビーがオーナー経営から“パブリック経営”への転換を図ったのは09年のこと。製薬・医療機器大手の米ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人社長を務めた松本晃氏が会長兼CEOに就任。創業家出身者は経営から退いた。

松本会長は、生え抜きの伊藤秀二社長兼COOとともに東証上場の準備を本格化。加えて、08年3月期で1・4%にとどまっていた営業利益率を10%に引き上げる目標を掲げた。当時のカルビーは、いい商品を作ることに熱心でも「コストに対しての関心がまったくなかった」(松本会長)。このよくも悪くも鷹揚な社風の改革に着手した。

09年、まずは各事業所や各工場の裁量に任せていた原材料や固定資産の購買を本社での集中管理に移行。包装用フィルムや調味料など資材共通化や調達へ競争原則の導入も行った。「それまでは、品質維持に必要と、現場で原材料や設備を買っていた。新しいルールで自由にモノが買えなくなった現場からは戸惑いの声も上がった」と、購買部の吉岡健太郎部長は振り返る。08年以前は年間100億円に達していた設備投資額は09年以降は約半分に下がり、減価償却額も減少している。

こうして得られたコスト削減の成果は、そのまま利益とするのではなく、販売価格引き下げの原資とした。従来、トップブランドであるカルビーの商品は、競合商品よりも15%ほど高く売られていた。これを、競合商品並みに引き下げたことで販売数量は増加。工場稼働率が上がり、収益力も向上した。「今では現場も手応えを感じている」(吉岡購買部部長)。

12年3月期の営業利益率は7%近くに達したとみられる。「来期も10億円程度の原価低減の余地がある」(平川功執行役員)、「現在の取り組みの延長で、営業利益率10%の目標を達成できる」(松本会長)とマネジメント層は自信を深めている。

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