「主要俳優に沖縄出身者は1人もいない」けど、あまりに凄まじい…映画『宝島』を"観てよかった"と断言できるワケ

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沖縄の歴史と実情を詳しく知っている人たちは当事者以外でどれくらいいるだろう。

昔を知る人がどんどん減っていく。近頃、過去にあったことを自分ごととしてとらえ、現在と未来を考えていこうというムーブがある。過去と現在には時間的な隔たりがあり、価値観もだいぶ違っているため、なかなか自分ごととしてとらえられない。

歴史に親しめないことへの打開策として、映画やドラマで伝える、それも現代人がタイムスリップして過去を実体験するというスタイルがある。

たとえば、戦国時代に現代の高校生がタイムスリップする『信長協奏曲』(2016)は興収46.1億円、戦時中に女子高生がタイムスリップする『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』は45.4億円の大ヒット。

ドラマでは山田太一脚本の『終りに見た街』(1982年)が現代の脚本家が戦時中にタイムスリップする作品だ。これは2005年、2024年にもリメイクされている。2024年版は宮藤官九郎が脚本化した。 

『この世界の片隅に』に近いスピリット

『宝島』はタイムスリップものではない。言ってみれば、映画館がタイムマシーンで、観客が当時の熱を直に眼前で目撃するような作品だ。

当時のコザ暴動に、どうにか現代に生きる自分たちの手で肉薄しようと、撮影は多いときで500人ものエキストラを動員し人海戦術で挑んだ。

宝島
大人になってヤクザとなったレイの狂気を窪田正孝がリアリティたっぷりに演じる(画像:映画『宝島』公式サイトより)

撮影はスタジオにつくられたセットで行われたが、怒りの炎と化した人びとがぶつかり合って引火してどんどん炎上していく様子は、昨今の邦画ではなかなか見ないスケールの大きさだった。

映画から炎や怒りが飛び出してきそうな勢いを観客が受け止めることで、SF的なフィルターを1枚介すことなく歴史を間近に感じることが可能になる。

アニメだけれど、戦時中の呉を徹底取材のうえ細やかに描き出した『この世界の片隅に』(2016年)に近いスピリットを感じる。

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