「主要俳優に沖縄出身者は1人もいない」けど、あまりに凄まじい…映画『宝島』を"観てよかった"と断言できるワケ

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「宝島」というタイトルをつけた意味に、ああ、そうか、そういうことなのかとハッとなる瞬間は、深く険しい森を抜けたような気持ちになる。

原作者・真藤順丈は、当事者ではない自分が沖縄を書けるのかと悩んだが、「非当事者としてずばぬけて面白いものを仕上げよう。映画化されるくらいのものを書いて、全国の人が沖縄の戦後史を知るきっかけになればいいと切り替えた」と、沖縄の映画館シアタードーナツ代表の宮島真一とのトークライブ「映画と本で魅せられるコザの街」で語った(「沖縄タイムスプラス」2025年9月27日より)。

映画のプレス資料によると、以前、大友監督が演出を担当した連続テレビ小説「ちゅらさん」の時代設定は1972年の沖縄本土復帰後、『宝島』は本土復帰前の20年を描いた物語。本土復帰前の沖縄を撮るにあたり、このように考えていた。

「本土復帰前の沖縄を描かないと、沖縄の人々の本当の気持ちは理解できないのではないか、そういう思いが強くありました。

一夜限りの出来事として語り継がれているコザ暴動から露呈される、群衆のパワー、無軌道な感情の奔流、優しさの裏側に潜めた沖縄の人たちの、一線を越えた時の強さや激しさを映画で見せたい。米兵による交通事故を発端にした米軍支配の矛盾や不満の爆発をどうやって描くことができるだろうかと、腐心しながら取り組んだ作品です」

歴史的な事象を背景に、空想の翼を広げ、そこに生きたかもしれない若者たちを思う存分躍動させて、壮大な物語に仕立ててある。

実際の歴史的事件と交差する物語

オンの情報を得るためにグスクは刑事として米軍と密接に繋がっていく。ヤマコはデモに参加し、先頭に立って声をあげていく。彼女は孤児・ウタ(栄莉弥)の面倒も見る。レイはオンの情報を得たいがためにヤクザになり、凄惨な暴力の世界に身を投じていく。

宝島
刑事となった妻夫木聡演じるグスク。真実に辿り着けるのか(画像:映画『宝島』公式サイトより)
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