「主要俳優に沖縄出身者は1人もいない」けど、あまりに凄まじい…映画『宝島』を"観てよかった"と断言できるワケ
冒頭は1952年のアメリカ統治下の沖縄。コザ(現・沖縄市)に暮らす幼馴染のグスク(妻夫木聡)、ヤマコ(広瀬すず)、レイ(窪田正孝)、オン(永山瑛太)は「戦果アギヤー」と呼ばれ、米軍基地から物資を盗み貧困に苦しむ人たちに分けていた。
ある夜、リーダーのオンとともにいつものようにフェンスを乗り越えて基地に忍び込むグスクたち。「宝島」というタイトルにふさわしい、わくわくの冒険譚のはじまりかと思いきや――。アメリカ兵に見つかり、命からがらの逃亡劇に。
危険を顧みない若者たちののっぴきならない事情とアメリカ兵との激しい攻防の中、「戦果アギヤー」のリーダーで英雄視されていたオンが消えた。

残された3人はそれぞれの生き方を模索する。グスクは刑事、ヤマコは小学校教師、レイはヤクザとなった。アメリカの支配下で、生活は楽ではなく、問題が山積み。でも3人の心からオンのことが消えることはない。
20年もの時が流れ、オンがあの日持ち去ったあるものが、グスク、ヤマコ、レイのみならず、アメリカ軍やCIAまで巻き込んでいく。
「当事者」でない者が沖縄を描くことの葛藤
2年後に沖縄が本土に復帰するという声明が出された1970年の
コザ暴動のシーンには、冒頭の戦果アギヤーとアメリカ兵の遁走劇をさらに超えるダイナミズムと、映画体験の醍醐味がある。歴史に基づき、アメリカと沖縄に関するきわめて難しい問題を描きながらも、ドキュメンタリーやノンフィクションではない。
原作は直木賞受賞作ゆえ、物語は消えたオンが残した何かに関する謎解きミステリーのような香りに満ちている。消えたオンは生きているのか、そして、彼が残したものとは何か――。
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