「主要俳優に沖縄出身者は1人もいない」けど、あまりに凄まじい…映画『宝島』を"観てよかった"と断言できるワケ

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3人にとって、オンは実在の英雄だが、姿を消したことで、より大きな存在になっていくように見える。おそらく、生きるうえでの信念のようなもの。オン役の永山瑛太が野生味あふれるたくましい存在感を放っている。

オンのかつての恋人で、彼とグスク、レイ、1人ひとりに向き合いながら、決して流されず、凛というか頑として両足で踏ん張って大地に立っているようなヤマコが魅力的だ。広瀬すず、最強。

1952年から沖縄が日本に復帰した1972年の20年の長きにわたり、アメリカ軍戦闘機の小学校墜落、コザ暴動など、実際の歴史的事件がグスクたちの生活に密接に関わっている。

彼らだけでなく、沖縄の人びとが抑圧され、疑問や怒りを溜めに溜め、それが一気に炸裂するのがコザ暴動だ。

前述の通り、コザの胡屋十字路で起こった自動車事故をきっかけに、事故を起こしたアメリカ兵と住人がぶつかりあう。人びとが道路にあふれ、喧騒は拡大し、火炎瓶が宙を飛び車が横転する。道路と街が燃え、不謹慎ながら祭りのような熱狂をそこに感じる。

そこで刑事とヤクザという交われない立場になったグスクとレイの2人が久方ぶりに邂逅し、ヤマコも動き出す。そして、この20年、なにかにつけて存在をちらつかせてくるオンが残した「戦果」の謎が明らかに――。

宝島
かつてオンの恋人だったヤマコ(広瀬すず)は、大人になって教師に(画像:映画『宝島』公式サイトより)

過去のことを自分ごと化させるための表現

コザ暴動があった1970年は大阪万博、よど号ハイジャック事件があり、1972年には札幌では冬季オリンピック、本土ではあさま山荘事件があった。

これらはよく語られるし、事件に関しては映画をはじめとして創作の題材によくなっている。でも、沖縄の事件はあまり知られていないのではないだろうか。

本土復帰前だからなのか。そうはいっても、戦争でアメリカに占領される前は日本だった。もっといえば、江戸時代、琉球王国を薩摩が支配した。沖縄は国と国のはざまでいつも揺れている。そして今も、日常的にアメリカ軍機が上空を飛んでいる。

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