日本では少数派「連接車」欧州鉄道でなぜ大活躍? 「揺れが少ない」などメリットあるがトラブルも
日本の鉄道は軸重制限が厳しく、連接車で軸重を減らすために車体を短く小さくすることは定員の減少につながり、混雑する路線では使いづらい。そして何より、すでに多くのボギー車を運行している実績がある中、わざわざ車体規格が異なりメンテナンスも複雑な連接車を積極的に採用する必要性がないという点が、日本で普及しない理由であろう。
一方、欧州の鉄道は全般的に、日本のラッシュや長期休暇などに見られるような大きな需要変動が少なく、増解結の必要性がそれほど高くない。また、もともと機関車牽引列車が主流の欧州は橋脚などの軸重制限がそれほど厳しくないため、軸重が増加しても影響はあまりなく、むしろ編成全体では軽くなるため鉄道会社にとって採用するメリットは多い。
地下鉄や都市近郊の鉄道を除けば、日本のような整列乗車やホームドアといった条件がなく、車体構造の異なる車両を導入しやすいという点も、ボギー車に交じって連接車を導入しやすい要因の一つになっているとも言える。
このため、欧州では連接車が高速列車からローカル列車まで幅広く使われている。

連接車導入で大問題が起きたフランス
代表格であるTGVを見てみよう。TGVは、編成の両端に配置された機関車が8両の中間客車を挟む形の編成で、客車部分が連接構造となっている。このため、中間客車部分の組み替えは基本的に行わないが、機関車は自由に組み替えることが可能だ。過去には運用上の都合で、編成間で機関車のスワップが行われたこともある。

現在試運転中の次世代型車両「TGV-M」(アヴェリア・ホライズン)は、連接構造ながら客車部分の増解結を容易にする構造を取り入れており、これまでのTGVでは編成を組み替えるのに1週間ほどかかったのが、2日で可能になるとしている。
また、TGVはこれまで何度か脱線事故に見舞われているが、連接車の長所の1つである車両が線路から大きく逸脱することがないという構造のおかげで、何人もが命を落とすような重大事故の発生は今のところない。ボギー車であるドイツの高速列車ICEが1998年、北部のエシェデで発生した脱線事故で車両が線路から大きく外れて100人以上の死者が出る大惨事となったことが対比として語られることも多い。
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