グルメイベントのブームに乗る演奏者の思惑 野外音楽ライブはフェスだけのものじゃない
そんな野外フェスにおいて、音楽以外で重要となるのが「グルメブース」だ。大勢の来場者が飲まず食わずで長い時間楽しめるワケはなく、さまざまな露店が出店する。たこ焼きなど画一的な料理は相対的には少なく、むしろ地元の食材やご当地グルメを全面に押し出すケースが目立つ。
中津川の場合は、ヒナより出荷まで抗生物質や抗菌剤の入った飼料を一切使用しないで育てた“恵那どり”の産地ゆえ、その銘柄鶏を使用したやきとりが販売されていたり、飛騨牛、鮎の塩焼きなどの屋台が出店していたり。「鶏ちゃん焼き」や「しょうゆカツ丼」などのご当地料理も提供され、人気を博した。他にも地元の店舗が出店しており、地元色の濃さが大きな特徴だ。
これらの現象は、地域還元というコンセプトも当然にあるものの、グルメブースのために全国を対象に業者を募って招聘するよりも地元の店舗を呼んだほうがコスト的にも有利という点も挙げられる。遠方からの出店だとどうしても宿泊が伴ったり、食材の確保に手間取ったりすることがある。一方、地元であれば、さまざまな点で融通が利く。全国から集まるイベント来場者に地元の料理をアピールできるという相互作用も働く。
グルメイベントに音楽イベントが乗っかる仕掛け
もともと大勢の人が集まる音楽イベントに、グルメは欠かせないものだが、昨今のグルメイベントでは、「東京ラーメンショー2015」のような面白い現象が起こっている。それは「グルメイベントに、音楽ライブが乗っかる」という仕掛けだ。
「中津川 THE SOLAR BUDOKAN」と同時期の9月18~27日に埼玉県越谷市で開催された「ラーメンフェスタinイオンレイクタウン」。文字どおり全国のラーメン店が30店舗(入れ替えあり)集結したラーメンイベントでは、会場内に特設ステージが設置され、7月1日にリリースされたシングルCDがオリコン11位にランクインしたANNA☆S(アンナッツ)をはじめ、昨年の「第56回 輝く!日本レコード大賞」の新人賞を受賞した男性イケメンユニットSOLIDEMO、本格的な楽曲を歌って踊るG→L(ジール)など、さまざまなアーティストたちによるライブ・パフォーマンスショーが繰り広げられた。
これらのグルメイベントにおける音楽の立ち位置は、料理をよりおいしくさせるというスタンスだ。いわばグルメ=主、音楽=従となっており、音楽イベントとは正反対の関係にある。昨今のグルメイベントは「B-1グランプリ」に代表されるとおりの大盛況ぶりで、料理を求めて行列をしている最中、リアルな音楽で楽しませるという効果が期待できる。
またグルメイベントはそのほとんどが入場料自体は無料のため、気軽に好みのアーティストを見に来たり、それをきっかけに通常生活では出会わなかったミュージシャンやアイドルグループなどを知るきっかけになったりする。それが結果的に会場の盛り上がりや売り上げに貢献できるという可能性も高い。いわゆる「にぎやかし」という側面において、グルメイベントにおける音楽は、非常に重要な役割を果たしている。
世の中全般を見ると、ITをはじめとするテクノロジーの進化を背景に、かつてのように特定の業界内だけでビジネスがとどまらない時代になってきている。あらゆる業界の壁が崩れ、これまで競争関係になかった業界や企業同士で需要を奪い合ったり、あまり関係が深くなかったような企業同士が協力しあったりしている。音楽やグルメ以外のイベントについても、さまざまな融合が生まれてくるかもしれない。
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