まだ素直に喜べない「インド新幹線」の前途多難 「E10系」導入で合意したが、欧州企業が信号受注
つまり、日本の鉄道業界にとって、インドは非常に厳しい市場であるということは、初めからわかっていた。
一方で日本は今回、新幹線技術を採用することを前提に、利子率0.1%、貸付期間50年、返済猶予15年という破格の条件を提示していた。
そんな中、インド側が単に安いからと信号通信システムをヨーロッパ企業と契約したのは横暴と言わざるをえない。そして、それを許してしまった日本政府、現地大使館やJICAの調整力、交渉力、そして新幹線システムへの理解のなさには大きな問題がある。
日印共同声明に「日本式信号」明示
車両メーカーは、当初のE5系よりも安くインド向けのE10系を完成させると思われる。日本国内向けのE10系と並行して生産することで、多少の仕様差があれど、コストダウンが可能となるだろう。
それにもかかわらず、インド高速鉄道に日本と異なる信号通信システムが導入されるとなればコストアップは必至で、元の木阿弥である。ODAプロジェクトでありがちな赤字覚悟の受注と言ってしまえばそれまでだが、金額が大きいだけに無視できないものになる可能性がある。
しかし、一筋の光明も差し込んできた。このたびの日印首脳共同声明では、インド高速鉄道プロジェクトの推進に関して、「最新の日本式新幹線技術の導入」のみならず、初めて「日本式信号によって走行する」という文言が付け加えられた。さらに「日本式信号を始めとする信号の早期の敷設並びに総合検測車及びE5系車両1編成の導入のために必要な作業を直ちに行う」として、「日本式信号」というキーワードが2度も繰り返された。
これは、明らかにインド側がシーメンスに信号システムを発注したことを念頭に置いた内容といえ、インド側の動きに釘を刺した格好だ。

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