まだ素直に喜べない「インド新幹線」の前途多難 「E10系」導入で合意したが、欧州企業が信号受注
そして、先の首脳会談である。インド高速鉄道プロジェクトは、一見、大きく前進を見せたかのように思える。しかし、インド現地から届く声を聞くと、日本国内でのあまりにも前のめりな報じられ方には違和感を覚えざるをえない。「善戦」の報告だけが日本に届いているかのごとくである。
今回、改めてE10系の導入が確認されたとはいえ、インドに本当の意味で「新幹線」が走るかどうかは未知数だ。
新幹線は車両単体では成り立たない。信号や保安装置など、システム一式が揃わなければ「新幹線」とは呼べない。E10系の導入がほぼ確定したことだけで喜んでいる場合ではないのだ。

信号システムは欧州企業が受注
インド高速鉄道公社は今年1月に信号通信システムの入札を公示した。フランスのアルストム、ドイツのシーメンスが筆頭となる企業連合がそれぞれ応札し、シーメンスの企業連合が410億ルピー(約691億円)で受注した。
シーメンスのニュースリリースには、欧州列車制御システム(ETCS)レベル2に基づく信号および列車制御技術を導入、最高時速350kmの列車運行を実現すると書かれている。
2024年11月8日付記事『インドは国産化?「新幹線輸出」なぜ難航するのか』で詳報した通り、インド高速鉄道公社は2024年、インドの車両メーカーBEML(Bharat Earth Movers Limited)に設計最高時速280kmの準高速車両8両編成2本を発注した。
インド国産車両が日本の信号通信システムを導入するハードルは高く、インドで導入実績のあるヨーロッパ方式になることは予想されていたが、シーメンスの受注、さらに最高時速350kmの運行を実現するという内容から、暫定開業時のみならず本開業時にもヨーロッパ仕様のシステムが導入されることが確定的となった。
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