まだ素直に喜べない「インド新幹線」の前途多難 「E10系」導入で合意したが、欧州企業が信号受注
車両については、インド側は当初E5系を導入する計画だった。しかし、価格や仕様、納期等の折り合いが付かず、計画当時に最新型だったE5系はもはや新型とは呼べなくなってきていた。この行き詰まりを打開するため、日本側は2024年末にE10系の導入と、E5系およびE3系の無償譲渡を提案したと伝えられている。インド政府はこの提案を受け入れたわけである。

もっとも、E10系の納入は2027年8月頃を見込む部分開通までに間に合わないため、E3系とE5系がまず2026年に輸出され、
ただ、このような日本側の必死の引き留め工作に反して、インド側はよりしたたかにヨーロッパの信号システムの導入を進めていたということになる。
インド市場の厳しさ
インド高速鉄道プロジェクトは、当初予算で約9800億ルピー(約1兆8000億円)、そのうち8割が円借款で賄われる計画で、調達条件はタイド(いわゆるひも付き)となっている。つまり、原則的には日本企業が受注することになる。土木工事は現地企業による建設に決まったが、核となる車両や信号といった部分は日本製となるのが当然である。
それにもかかわらず、信号関連をヨーロッパ企業に受注させてしまった。そんなことが許されるのか。
実は、インドネシアと並んで最大規模の円借款受け入れ国であるインドには、ムンバイ、ベンガルール、デリー、チェンナイなど6都市のメトロ(都市鉄道)の一部区間だけでも、これまでに計1兆円以上の円借款が供与されている。しかし、日本のODAで建設されたとはいえ日系企業の受注例は極めて少なく、ヨーロッパ仕様の都市鉄道になっている。
もっとも、これらの案件はほとんどの場合、調達条件が一般アンタイド(調達先を限定しない)となっており、これは仕組み上、仕方のないことである。ただ、インドには欧州メーカーのほか、韓国のロテムなど各国のメーカーが進出して車両やシステムの現地生産を進めており、高いシェアを持っている。当然、インド政府にも強いパイプを持っている。
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