TSUTAYA図書館に協業企業が呆れた理由 CCCとの公立図書館運営の協業見直しへ
――独自分類のどこが具体的に問題ですか。
実際に本を検索していただければわかるが、どう見ても素人がタイトルや単語だけを見て判断したとしかいえない分類がある。たとえば著名な作家の食べ物に関する随筆が、料理本に分類されているような例だ。
また独自分類の詳細な区分表が開示されておらず、系統立てて理解することが第三者にはできない。たとえて言うなら、図書館の書架が個人の本棚のようになっている。好きなように分類した当事者にとってはわかりやすいかもしれないが、第三者にはまったくわからない。通常、公共図書館が採用している日本十進分類法(NDC)はグローバルスタンダード。電子計算機のような古い言葉を使っているところもあるが、一定の評価ができる分類法だ。
リニューアル直後に中央にTRCの人手を応援派遣したが、現場では利用者から「本がどこにあるかわからない」という問い合わせが殺到していた。利用者が探せないだけではない。TRCのスタッフも独自分類を学んでいないので、聞かれても探せない、お役に立てない。本来、司書は早く正確に情報を検索・提供できるスキルを身につけているが、そのスキルが中央ではまったく役に立たないのだ。
図書館はエンタメか?
――不適切な選書も議論を呼んでいます。
風俗街の紹介本が問題視されているが、蔵書問題の本質は違うところにある。図書館の本来の使命は、膨大な資料を使いやすく収集・整理し、それによって利用者が仕事や生活をより豊かなものにする情報に接し、結果として「地域の知力」を上げるということ。地域にとって本当に買うべき本は何なのか、一過性でなく長期的な視点で考えなくてはならない。
何を買うべきかについては本来、自治体ごとに基準がある。たとえば東北のある県は、小説は大量には買わず、総覧・年鑑や郷土資料を重点的に収蔵する方針だ。これは「市民が自分では買えない、ほかでは容易に手にできない本を提供する」という考え方だ。
一方、市民が求めるから、売れているからという基準だけで作った蔵書は荒れる。ほかの自治体の例でも、流行の小説と健康関連の本ばかりが並ぶ図書館になっているところがある。CCCは海老名で、「食こそ文化」という発想から料理本を大量に集めている。彼らにとって公立図書館はエンタテインメントの一つかも知れないが、地域にとって本当に買うべき本は何なのか、遠大な価値観でもって考えて欲しい。
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