トランプ大統領がどんなにロシアへの圧力をチラつかせても、突破口は見つかっていない。トランプ氏は最近、ロシア産の化石燃料を購入し、自国で加工し、西側諸国に輸出するインドに対して、50%の関税で圧力をかけているが、インドはロシアのみならず、中国にも急接近している。ほかのグローバルサウスの国々も、かつてのようにアメリカの圧力に従う国は激減している。
アメリカは欧州の安全保障・経済事情に関する情報をかなり詳細に把握しており、とくに軍事・安全保障面では情報機関や駐在部隊を通じて欧州情勢に精通しているとされる。一方、社会・歴史的に複雑な欧州事情への理解は浅いとみられる。つまり、データの分析は進んでいるが、各国の歴史的背景や国民感情までを十分に理解しているわけではない。
J・D・ヴァンス副大統領は2月に開催されたドイツ・ミュンヘンでの安全保障会議で、欧州大陸が直面する最大の脅威はロシアや中国ではなく「(欧州)内部から」来るものだと発言。欧州の現状を痛烈に批判した。
ヴァンス氏の発言に対し、ドイツのボリス・ピストリウス国防相は「容認できない」と反発。結果的に、ヴァンス氏の主張は欧州では何も評価されなかった。後日、アメリカに詳しい欧州メディアでは、ヴァンス氏の激しい欧州批判は欧州ではなく、アメリカの有権者に向けられたものだと指摘され、欧州の指導者が納得した。
「アメリカ人に国際社会は存在しない」
これと酷似した事態が、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領が3月に訪問したホワイトハウスでも起きた。
ヴァンス氏は、ゼレンスキー大統領からトランプ大統領にアメリカの支援に対する感謝の言葉がないと強く批判。これに対し、ロシアの侵略戦争を戦い続けてきたゼレンスキー氏は「私は大まじめで、戦時下の大統領だ」と訴えたが、トランプ、ヴァンス両氏によって想定外の屈辱を味わわせられた。
これについて、パリ在住のアメリカ人ジャーナリストは次のように語る。「あの出来事でトランプやヴァンスを批判するアメリカ人はいない」「彼らは公の場でアメリカ人有権者に好印象を与えたことに満足していたはずだ」と。
「アメリカ人には自国があるだけで国際社会などは存在しない」と考えるべきかもしれない。ただ、欧州の指導者は、アメリカがウクライナの和平に深く関与することで、少しでも社会・歴史的に複雑な欧州事情への理解を深めてほしいという望みを持っているようだ。
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