5人の命が奪われたタイタニック見学ツアー事故の全容を、オーシャンゲートCEOの実態とともに沿岸警備隊が報告

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われわれのような素人が知っているカーボン素材と言えば、非常に高い強度と軽量さを併せ持ち、F1マシンやボブスレー用の“そり”などに使われているハイテク素材という印象が強い。

だが、潜水艦や潜水艇のボディには通常、鋼鉄やチタンといった金属材料が用いられ、カーボン素材が使われることはまずない。なぜなら、カーボンコンポジットの主な材質である炭素繊維は、酸素や水蒸気への暴露、圧力や温度の変化によって疲労が蓄積し、物性劣化が進行していくからだ。

特に圧力を繰り返し受けると、カーボン素材中で層間剥離と呼ばれる現象が生じ、積層されたカーボンが分離して強度が落ちてしまう。

タイタン胴体部
タイタン胴体部へのカーボン加工の様子(画像:USCG)

金属は応力を受けても変形することで、ある程度は耐久できる特性がある。だがカーボンコンポジット素材は一度損傷すると修復が難しい。また、カーボンコンポジットはその成形過程において空隙、汚染、気泡、しわ、多孔性などの欠陥が生じる可能性があり、そこに水が浸入するとさらに強度的な問題が生じやすくなる恐れがある。

2021年に新しい船体を製造

実際、タイタンの最初の船体は、2018年と2019年に実施した最大想定深度への無人潜航テストで、船体に疲労が原因とみられるクラック(ひび割れ)が生じたため、2021年に新しい船体を製造した。

ラッシュ氏は、オーシャンゲートの潜水艇設計開発プロジェクトには、ワシントン大学応用物理研究所(APL-UW)やボーイング、そしてNASAが協力したと述べていた。

しかし、専門家らが安全上のマージンを確保するために提出した設計推奨事項や厳しいテスト要件の多くがラッシュ氏によって無視または却下されたことから、APL-UWはサイクロプス1号設計時の500万ドルの共同研究契約のうち65万ドル程度の研究が完了した時点で「袂を分かった」と述べている。

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