裏切られ、失脚させられる可能性に常に悩まされる独裁者は、側近たちの扱いに苦労する

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だが、デ・メスキータとスミスがジンバブエと北朝鮮とアフガニスタンに該当するとした状況は、あらゆる独裁政権に当てはまるわけではない。

独裁者のなかには、お金を生み出す仕組みを稼働させ続けるために、はるかに熱心に働く必要がある者もいる。人材を採用することのできるプールが格段に小さいからだ。

軍事政権の新たな指導者を想像してみよう。1年前、彼は大佐で、軍での自分の役割について頭を悩ませていたが、今や権力を掌握し、独裁者としての自分の新しい役割について心配する必要がある。

自分の権威を示し、国際社会を落ち着かせるために、初めてのテレビ放送を終え、いよいよ自分の新しい職務に取り掛かろうとしている。その仕事の大部分は、仲間の大佐たちを満足させておくこととなる。

権力の座にとどまるためには、彼らが必要だからだ。彼らは、別の人間に指揮を執らせれば自分の境遇を改善できると感じていたら、必ず別の人間に指揮を執らせるだろう。そして、その人間が権力を掌握したら、前任者はたちまち窮地に陥る。

人事を刷新するのが難しい理由

クーデターを起こした指導者の立場に立つと、この状況で問題になるのは、人事を刷新するのが難しいことだ。

兵士は大勢いても、大佐の数は限られている。しかも、指導者は周囲に高級将校を必要とする。二等兵には、指導者が新政権を率いるのを助けるだけの経験も能力もないからだ。

民主国家では、有権者は替えが利く。1人を失っても、別の人を勝ち取ることができる。だが、独裁的な政権では、真の選挙母体を構成するエリートの供給量は有限だ。

たとえば、君主制国家では、君主一家には限られた数の男子しかいない。だから、1人と疎遠になれば、後継者がいなくなってしまうかもしれない。

多くの独裁国家についても同じことが言える。将軍や諜報機関の指揮官はわずかしかいないので、独裁者は自分に逆らうようになった人間を、いつも誰かと交代させられるわけではない。

このように、軍事政権や君主制国家では人材のプールが限られている結果、支配者はエリートを味方につけておくために、いっそう努力する必要がある。いわば、彼らの値段が上がるわけだ。

そして、独裁者にしてみれば、それは苛立たしいかもしれないが、エリートたちに支出しないという選択肢は、現実には存在しない。

(翻訳:柴田裕之)

マーセル・ディルサス キール大学安全保障政策研究所客員研究員

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Marcel Dirsus

ドイツのキール大学安全保障政策研究所の客員研究員。オックスフォード大学で学び、反政府武装勢力によるクーデターが未遂に終わった2013年にはコンゴ民主共和国で働いていた。政治をテーマとするニュースレターのThe Hundredを執筆し、NATOやOECDといった主要な財団や国際組織に助言を与えてきた。

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