廃止の危機もあった神戸「六甲山上への足」の現在 「まやビューライン」の摩耶ケーブルは開業100年

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摩耶山天上寺は飛鳥時代の646年(大化2年)の創建とされる。孝徳天皇が勅願してインドから来た法道仙人が開いたという古刹だ。最盛期には約3000人の僧を抱える摂津国で最も大きな寺だった。

本尊は十一面観音菩薩と、仏母摩耶夫人尊。釈迦の生母である摩耶夫人を本尊とする日本で唯一、世界的にみても珍しい寺院だ。五穀豊穣の祈願寺とされたほか、浄水を司る仏とされていたため、灘五郷の酒蔵からも信仰があつかった。

神戸 天上寺
まやビューラインのケーブルカーとロープウェーを乗り継いだ先にある摩耶山天上寺(編集部撮影)

戦後にロープウェーが開業

初午の縁日には、天上寺で授かった飾りで馬の頭を飾る珍しい行事が全国に知れ渡っていたという。このため「摩耶詣(まやもうで)」は春の季語として歳時記にも掲載されている。「菜の花や月は東に日は西に」という有名な句は、与謝蕪村が天上寺を訪れたときのものだ。

近代までは意外に身近な寺だったにもかかわらず、天上寺のにぎわいの記憶は、ほぼ現在に引き継がれていない。参詣者が減り始めたのは摩耶ケーブルができた後だったようだ。

その後は1938年(昭和13年)に阪神大水害のため運行休止。1944年(昭和19年)には軍事転用するためのレールを供出した。戦後に運転を再開したのは1955年(昭和30年)のことだ。

戦後の運転再開のとき、併せて開業したのが奥摩耶ロープウェイ(現・摩耶ロープウェー)だ。摩耶ケーブルの摩耶駅(現・虹の駅、上側の終点)と、摩耶山の頂上付近にある掬星台(きくせいだい)を結んだ。

【写真を比較】現在は外国人観光客が行列を作る摩耶ケーブル駅。昭和初期の白黒写真と見比べてみる。ほぼ100年を経てもその雰囲気は驚くほど変わっていない?
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