半導体大手TSMCの技術流出で浮上した"東京エレクトロンやラピダスへの疑い"は妥当なのか
ラピダスを疑う臆測は連想が要因
このように東京エレクトロンは外部へ機密情報が流出した事実は確認されていないと発表し、ラピダスへの流出について否定している。
台湾の報道でラピダスへの情報流出が疑われた背景はいくつか考えられる。現在のラピダス会長である東哲郎氏はもともと東京エレクトロンで会長を務めていた。今回、流出に関わっていたのが東京エレクトロンの現地社員だったことから結び付けられたと思われる。
また各種報道のされ方から推測するに、台湾の捜査当局も現地メディアに対して、日本企業に流出したとリークしているようだ。具体的な社名は出していないようだが、前述の理由からラピダスへの連想につながっているとみられる。

東京エレクトロンにとってTSMCは最大の顧客だ(写真:An Rong Xu/The New York Times)
一見すると、わかりやすいストーリーを作れる状況証拠が並んでしまっているのである。しかし、今回の情報流出は本当に国家間を跨った組織的なものなのだろうか。
筆者は現時点で東京エレクトロンやラピダスが組織的にTSMCの情報を不正に取得しようとしたとの見方は正しくないと考えている。両社には動機がないからだ。
東京エレクトロンにとってTSMCは最大顧客である。半導体業界をリードするTSMCと歩調を合わせることは、半導体製造装置メーカーにとって、業界でリードを維持し続けるために最も大事なことの1つである。
ラピダス側の立場を考えても、TSMCの技術情報を入手する動機があるのか疑問だ。ラピダスもTSMC同様に2nmノードプロセスという先端半導体を開発しているが、同じ2nmといっても各社で材料や細かな構造は異なる。これまでラピダスが工夫を重ねてきた技術にTSMCの情報を反映させても、むしろ失敗のリスクが高まる。
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