レンタルWi-Fi不要の海外eSIM「トリファ」が急成長。日本語サポートで国内1位。2034年には40兆円市場へ

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特に評価しているのが、設定方法を画像保存できる機能だ。上白石さんは「eSIMのインストール方法や現地での切り替えの方法を写真にしてカメラロールに保存させてくれる。現地の通信環境がない場所でもセットアップできる。1つでも不安要素が減ると安心して旅立てます」と、海外旅行者の不安に寄り添う設計を「トリファのすごく優しいところ」と表現した。

設定手順
上白石さんが「優しい」と評した、アプリからダウンロードできるeSIMの設定手順の画像。海外到着後にオフラインでも設定手順がわかるようにまとめられている(筆者撮影)

アジア展開とスーパーアプリ化を視野に

トリファの利用データから、海外旅行における通信利用の変化が見えてきた。2024年の実績では小容量プランが60%を占めていたが、2025年は大容量プランが77%まで増加している。嘉名氏は「Google翻訳やInstagramはもちろん、TikTokでライブ配信をしたり、ChatGPTでおすすめの行き先を調べたりと、通信がつながることが快適な旅の前提になっている」と分析する。

実績
2025年は大容量の利用が増えているという(筆者撮影)

渡航先にも変化が現れている。2023年はアジア圏が59%だったのに対し、2025年は75%まで上昇した。円安や物価高による渡航コストの上昇で、近場のアジア旅行へのニーズが高まっている。さらに、生成AIの普及により現地語の情報にアクセスしやすくなったことも、アジア旅行増加の要因だという。

嘉名氏
トリファ代表取締役の嘉名雅俊氏(筆者撮影)

こうしたアジア圏への需要シフトを踏まえ、トリファは「日本ナンバーワンからアジアナンバーワンへ」という目標を掲げている。すでに台湾、韓国、香港では現地通貨・言語に対応しており、マーケティングを本格化させる段階にある。台湾については支社設立を検討段階だという。

法人需要も拡大している。大企業では数百台、数千台のレンタルWi-Fiを管理する手間とコストがかかっているが、eSIMならアプリ内で完結する。日本企業ならではの強みとして、インボイス発行にも対応している。

パンデミック収束後の2年間で売り上げは15倍に成長。2024年10月にはANAホールディングス、グローバル・ブレインをリード投資家として総額12億円の資金調達を実施し、累計調達額は13億円となった。この調達と同時に社名を株式会社ERAKEから株式会社トリファに変更。インバウンド対応やアジア展開の加速に向けた体制を強化している。

将来的には、eSIMを起点として旅行先での移動、決済、保険、出入国管理など、海外旅行のあらゆる不便を解決する「スーパーアプリ」への進化を目指す。「トリファという名前は『トリップのインフラ』から来ている。パスポートとトリファだけで、世界中を自由に旅行できる未来を作りたい」(嘉名氏)。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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