3年間で延べ500人以上が参加した、KDDIの視覚障害者向けスマホ教室。VoiceOverとSiriで画面を見ずにiPhoneを操作
開発にあたってKDDIは、視覚障害を持つ社員へのヒアリングを重ねた。「点字は使わない人が多い」「ロービジョンの人には色付きは見づらい」という意見を反映し、画面保護フィルムメーカーと連携してタッチ感度を損なわない素材を採用。au・UQモバイルユーザーなら無料で配送される。
広がる期待と、追いつかない現実がある。教室の課題は指導者不足だ。講師1名に対して参加者と同数のサポートスタッフが必要で、人材確保が最大の障壁となっている。関東圏外の支援センターからも問い合わせが相次いでいるが、対応が追いつかない。ボランティアの育成を通じて、より多くの視覚障害者に届けたいというのが関係者の願いだ。
iPhoneは20万円近くするため「なかなか手が出ない」という声もある。Android端末での教室開催も検討課題だが、機種によって操作手順が異なるため、統一的なカリキュラム作成が難しい。3Gサービス終了により、従来型携帯電話からスマホへの移行を迫られる視覚障害者も増えている。
防災教室で命を守るスマホ活用
もしものとき、スマホは命綱になる。中途失明が急増する2030年問題を見据え、1月からは防災に特化した教室も始まった。雨音にかき消されそうなSiriの声を頼りに、避難経路を確認する訓練。ビデオ通話で避難口の方向を確認する方法、位置情報で救助を求める手順を、家族や支援者と一緒に学ぶ。
佐嶋氏は声に力を込める。「災害時に一人ぼっちになって外に避難しなければいけない。でも見えないから出口がどこかわからない。そんなときもビデオ通話を使って晴眼者とつながって、出口の方向を示してもらえば避難できる。ひょっとしたら命が助かるかもしれない」。
スマホの機能を知っていても使い方がわからないのではもったいない。日頃から使い慣れていくことが重要だ。KDDIの取り組みは、テクノロジーと人の温もりが融合した、共生社会実現への確かな一歩といえるだろう。
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