Googleの戦略/プレイス、アドワーズの取り組み《O2Oビジネス最前線・黎明期を迎えた新・消費革命》

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--「スマートフォン利用者の48%がネットの地図で店舗やサービスを検索したことがあり、43%がその後実際に店舗に訪れていて、26%がその後購入に至った」。「スマートフォン利用者の3分の2が買い物に必要な情報をスマートフォンで得ている。4人に1人が店頭でスマートフォンの活用により購買の意思決定を変えた」。

11年3~7月、グーグルが調査機関Ipsosと協力して行った全国のスマートフォン利用者を対象にした調査結果です。営業の現場からしてもこれは驚きの数字ですね。

吉崎 この調査結果は、小売企業にとって非常に重要だと思う。いかに彼らの商品・サービスを消費者に届けるか知恵を絞りながら営業活動を行っている。

具体的には、地域ターゲティングがある。携帯電話のGPS機能を利用する。特定の地域にいる人だけに広告を配信するサービス。リスティング(検索連動型)広告は、入札方式となっている。この入札価格を距離に応じて変える機能も提供している。銀座から半径何キロ以内はいくら、それ以上はいくらというように入札価格が変わる。

従来は、小売りのクライアント企業のほとんどがEコマースだった。実際のお店に足を運ばせ購入を促す「O2O」の流れは、去年くらいから増えている。スマートフォンの普及の影響が大きい。

--リアルのお店の場合、広告の効果を測定できるのでしょうか。

一部のクライアントで、ある商品はGoogleの広告を出すけれど別の商品は出さない場合に、売り上げにどう影響するか実験している。もちろんGoogle以外の媒体にも広告は出しているのでどこまで厳密な実験といえるかは難しいが、他の条件を一切変えず一定期間だけという形で試している。

--クリック後、実際の来店につながったか、効果測定はどうするのですか。

一部取り組みは始まっている。お客さんがクリックしたらクーポンがダウンロードできるお店もある。クーポンを来店時に見せることで、Googleの広告経由で来店したことがわかる。クーポンを利用しても広告の料金は変わらない。

ほかにも、クライアント企業のブランディングの意味で、オンラインとオフラインをつなげている。企業の認知度や好感度を高めるようなキャンペーンをオンラインでやって店頭にお客さんを導いている。

たとえば、Googleの子会社である動画共有サービスYouTubeを利用して、企業向けにカスタマイズされた有料のブランドチャンネルを提供している。ワコールは独自の動画を流し、好感度や認知度をアップさせて店頭の販売につなげている。好評を得た動画はテレビCMで流すこともしている。ワコールのほかにもハウス食品がレシピを載せていたり、ユニクロのテレビCMの裏側など普段なかなか見せないものを載せたりしている。YouTubeなので動画再生回数で利用者の反響も測れる。そこから企業のウェブサイトに何人誘導したかもわかる。

--お客さんの反応はわかりますか。

直接声を聞く機会はあまりないが、数字に如実に表れる。

同じ商品で同じキーワードで、文章だけ変えた広告を期間ごと交互に変えた場合に、クリック数にどう変化があるか、常日頃地道に実験・改善に努めてパフォーマンスを上げている。

--実際クライアント企業にどのような提案をしているのでしょうか。
 
 どのようなキーワードでの検索が増加しているか、あるいは減少しているかクライアント企業に提供している。広告のキーワードに生かすだけではなく、実際の店頭の品ぞろえに生かすことも提案できる。たとえば、「チノパン」というキーワードで検索する人が増加傾向にあるから、店頭にチノパンを並べる数を増やすなど。

実例としては次のようなケースがあった。あるクライアント企業のある商品の売り上げの年間の傾向がある。その傾向が、商品名をキーワードとしたグーグル検索の傾向と一致していない場合があった。つまり検索は上昇しているのに、売り上げは下がっている。
 
 どう解釈すればいいのかクライアント企業から相談を受けた。検索が多いということは、お客さんは求めているはずだ。では、在庫の問題なのか、あるいは季節に合った商品が出ていないのか。いろいろ生かし方はある。

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