北朝鮮軍事パレード、金第1書記の言葉の意味 なぜ「人民のため」と強調したのか

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手を振る金正恩第1書記(写真:REUTERS/Damir Sagolj)

権力中枢をめぐっては気になる点もあった。金第1書記とともに閲兵するはずの金永南・最高人民会議常任委員会委員長と朴奉珠首相の姿が見えなかったのである。金委員長は87歳、朴首相は76歳と高齢でもあり、健康状態が気になるところだ。

今回、金第1書記が直接、演説を行った。ここでのキーワードは「人民、人民に感謝」と、韓国・中央大学の鄭昌鉉(チョン・チャンヒョン)教授は指摘する。「人民生活を助けるのが最も重要とことさら強調している。10月4日に発表された金第1書記の談話でも、すべてを人民のために、すべてを人民大衆のために、と述べている」と鄭教授は付け加える。

恐怖政治=反不正腐敗闘争?

「人民」を強調した点は、西側メディアではすぐさま「政権の不安定さを人民の支持に訴えている」「劣悪な経済状況に苦しむ国民の不満を和らげようとしている」と指摘しがちだ。もちろん、その可能性もあるだろうが、今回の演説は、過去からの延長線上にあるものといえる。

前出の鄭教授は、2012年6月2日付『労働新聞』に掲載された政論の中で、「今は外から押し寄せる敵が怖いのではなく、社会主義揺籃のなかで成長した(労働党)幹部の官僚化・貴族化が問題」と指摘している点を取りあげる。幹部の官僚化・不正腐敗と対置する存在として「人民」「人民のため」とことさら強調しているのは、「今後も労働党幹部による官僚主義や不正腐敗行為に対し、強力に、徹底して闘争を繰り広げる」(鄭教授)ことを、改めて強調したことになる。

また、「外部で言われている北朝鮮の“恐怖政治”とは、この労働党内での官僚化・不正腐敗追及の核となるものだ」と鄭教授は説明する。つまり、北朝鮮の政権が不安定化しているわけではない、ということだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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