就任1年で優勝、ヤクルト真中監督の采配術 「3本の矢」は、なぜ成功したのか
結果を求めようとすれば、監督の野球になる。どこの世界も一緒だ。会社でも上司が自分の意のままにコントロールすれば、一定の成果は出る。だが、将来を見据えた場合どうか。押しつける野球であれば、選手は結果を出すために「最低限」を考えてしまう。たとえば無死一塁、2番打者は「最低限走者を二塁へ送ろう」と監督の顔色をうかがう野球になる。それでは、組織の最大化は図れない。
自主性は本人に自由を与えるため、甘えが同居する危険もはらむ。真中監督は絶妙なタイミングでチームを引き締めた。勝っても負けても「明日切り替えていきましょう」と話す指揮官だが、1度だけ「同じ球に同じようにやられている。工夫がないし、ただ打っているだけ。本当に残念」と肩を震わせたことがある。
9連敗から学んだこと
0―2で敗れた5月20日のDeNA戦(神宮)後の話だった。相手先発の三浦には、昨年7月13日の対戦から4連敗。考える野球を標榜しながら同じような失敗を繰り返す。自主性はいい加減を許すわけではない。言葉を荒げ、厳しさを示すことで、緊張感も伴わせていた。
真中監督も静かに自らのスキルアップを図っていた。5月中旬。9連敗した時、敵将を見ていた。相手の監督がどんな立ち振る舞いをするか。そしてどんなサインを出すのか。同じく連敗していた日大の先輩でもある阪神・和田監督が普段と違う戦法をとった。そこに感じた違和感。
「普段と違うことをしたら駄目だ」
監督としての経験値を敵将から学んでいった。
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