【産業天気図・化学】世界景気の復調を受けて「曇り」から「晴れ」へ徐々に復調へ

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12年4月~12年9月 12年10月~13年3月


 今11年度下期(2011年10月~12年3月)に「雨」模様へ突入した化学業界の景況感は、来12年度には「曇り」から「晴れ」へと改善していきそうだ。11年夏以降に急悪化した主要な化学品の市況や需要が徐々に回復。液晶パネルや半導体などの在庫調整も段階的に進むうえ、東日本大震災やタイ洪水による生産・出荷減の影響もほぼなくなり、関連する部材の販売が持ち直していきそうだ。歴史的な円高の一服も好材料となりうる。

「会社四季報」最新号(12年春号、3月12日発売)における化学セクター162社の来2013年3月期業績予想は、売上高が前期比3.3%増(今12年3月期は1.1%増)、営業利益は同10.9%増(同17%減)と二ケタ減益に沈む見通しの今期から底入れする見通しだ。

今期の化学業界の業績は上期(11年4~9月期)は震災に伴うサプライチェーン(部品の供給網)寸断の影響があったものの、主要な化学品の市況は堅調に推移していた。ところが11年夏~秋以降は、欧州の債務危機問題の深刻化による金融市場の動揺や中国をはじめとする新興国の金融引き締めなどが響き、世界景気が減速。それにつれて、主要な化学品の市況が悪化した。

加えて、11年夏前後から液晶パネルや半導体市場が在庫調整に入ったことで、一部の化学メーカーが得意とする電子系部材も減速を強いられた。さらに歴史的な水準まで進行した円高による採算の悪化や輸出競争力の低下なども収益減退につながった。

ただ、来期は徐々に回復基調に向かいそうだ。欧州債務問題はくすぶったままだが、日米欧の中央銀行が一段と金融緩和政策を進めていることで、一時大きく混乱した金融市場は落ち着いてきた。中国をはじめとする新興国は金融政策を引き締め方向から緩和に転換させており、米国や日本の景気も力強さには欠けるとはいえ回復基調にある。

これらのマクロ的な要因を受けて主要な化学品の市況や需要は徐々に持ち直していきそうだ。液晶パネルや半導体市場も在庫調整が段階的に進んでくるとみられる。そして、一時は1ドル76円台の歴史的な水準まで進行した円高も、足元では1ドル=80円台が定着するなど円安方向に転換してきている。

これらの要素を鑑みると化学業界の12年度は徐々に復調に向かうと想定される。今上期との比較では前半は「曇り」、後半は「晴れ」になると東洋経済は予想する。

(武政秀明 =東洋経済オンライン)

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