212件ある日本の親子上場、解消の動きが加速。株主圧力で企業価値向上へ本腰

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

各社に先行して親子上場の解消に動き、投資家から模範とされているのが日立製作所だ。10年以上に及ぶ構造改革を進めた結果、22年度に上場子会社がゼロになった。この間、多くの子会社を売却し、中核事業に不可欠と判断した一部子会社を吸収した。日立株はその後3倍以上値上がりした。

投資家やストラテジストなど市場関係者の間では、親子上場解消に動く可能性が高い次なる候補探しが始まっている。代表格は製鉄メーカーの日本製鉄や総合化学の住友化学、小売りのイオンなどだ。

英運用会社のゼナーアセットマネジメントの創業パートナー、デービッド・ミッチンソン氏は、同氏が手掛ける取引の約20%が子会社の上場廃止を見込んだものだと明かす。「取引所と株主からのガバナンス(統治)問題の解決を求める圧力は、市場にとって非常に影響力がありポジティブな要因」とみる。

岡三証券の内山大輔シニアストラテジストは、親子上場の解消について「数年前であれば10年単位の問題という認識だったが、東証の要請もあり、5年程度という認識の変化がある」と言う。

子会社ペイペイの上場計画を発表したソフトバンク宮川社長Photographer: Kosuke Okahara/Bloomberg

もっとも、大手企業グループが実際にいつ親子上場の解消に動くかは予見しづらい。リブラ・インベストメンツの佐久間康郎代表取締役は「親子上場の解消を狙うというのはアイデアとしては常にあるが、それがいつ具現化するのかが読みにくく、機会損失にもなりかねない」と指摘。見かけほど投資機会はないとの見方を示す。

親子上場解消と逆行する動きもある。ソフトバンクグループや楽天グループ、GMOインターネットなどテクノロジー企業グループは通信や電子商取引、金融など幅広い事業を展開し、子会社の上場を資金調達手段として継続的に活用し続けるとの見方が多い。ソフトバンクG傘下のLINEヤフーとソフトバンクは、デジタル決済事業のPayPay(ペイペイ)の上場計画を発表した。

コムジェスト・アセット・マネジメントのポートフォリオ・マネジャー、リチャード・ケイ氏は「上場子会社を非公開化するだけでガバナンスの改善につながるかどうかは明確ではない」と話す。

とはいえ、グループ企業の株式保有構造スリム化への圧力は今後も強まる可能性が高い。CLSA証券のストラテジストであるニコラス・スミス氏は、東証が7月から少数株主保護を目的に経営陣による買収(MBO)に関する規則を強化するため、子会社の早期買収に向けたインセンティブが強まるとみる。「皮肉な見方をすれば、ルールの厳格化を前に既に駆け込み的なMBOや買収が起きているとも言える」と語った。

著者:佐野日出之、松山かの子

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事