富士山噴火で「火山灰」4.9億㎥の戦慄。2時間で都市機能はマヒ、必要な備蓄は「大地震」以上と識者
降灰地域では、「断水」の恐れもある。火山灰にはフッ化水素、塩化水素、二酸化硫黄などの「火山ガス」成分が付着している。浄水場に降り注げば水質は悪化する。浄水場の処理能力を超えれば、飲用が難しくなる。
東京都水道局では、浄水場のプールのような施設に「ふた」をする対策を進めているという。
ライフラインを維持するうえで、藤井名誉教授が最も心配するのは「広域停電」だ。
送電線には電線から鉄塔や電柱に電気が流れないようにするため、「がいし」と呼ばれる陶磁器製の絶縁器具が使われている。がいしに火山灰が付着して雨に濡れると、絶縁性能が低下し、停電してしまう。
「東京湾岸には火力発電所が集中していますが、その吸気フィルターが火山灰で目詰まりしてしまう。フィルターの交換が追いつかない場合も停電する恐れがある」
停電すれば病院機能の停止も
停電すれば、鉄道や携帯電話の基地局、水やガスを送り出すポンプも止まる。病院の医療機器も使えなくなる。非常用電源があっても、通常は3日が限度だ。
「高齢者や病人など、火山灰の間接的な被害で命の危険にさらされる人もいます。電気の確保は重要な課題です」
たとえば病院の機能が停止すれば、患者は医療を受けられる地域に避難しなければならない。スムーズな移動を実現するうえで、カギになるのが道路の確保だ。
3月の「ガイドライン」は、噴火から4日目の朝に「緊急輸送道路」の火山灰の除去が終了する、とした。
しかし、この想定には人員や資機材の確保・配置、燃料の補給体制、事故・放置車両の撤去などが考慮されていないため、実際の除去作業にはさらに時間がかかるだろう。
そんな火山灰まみれの首都圏から遠方に避難したいと考える人も多いかもしれない。しかし、人口が密集する首都圏から一斉に避難するのは、交通の点からも避難所確保の点からも現実的ではない。
火山灰の重みによって木造家屋が倒壊する恐れのある地域以外は、「できる限り自宅などで生活を継続することが基本」になる。