「日本書紀」に記されたスサノオの降臨譚には、なぜ新羅と百済の"2つの異伝"が存在するのか?

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この『魏志』倭人伝より以前の古代日本について記した歴史書がある。後漢時代の1世紀後半に成立した『漢書(前漢書)』地理志には、紀元前1世紀に「楽浪郡の海の先に倭人が住んでおり、百余国に分かれる。定期的に漢に朝貢した」とある。

楽浪郡とは、紀元前108年に漢が朝鮮半島に置いた4つの郡の1つで、現在の平壌付近の地域にあたる。すでに紀元前から古代日本人は活発に中国王朝と外交を展開し、その要となったのが朝鮮半島の国々だった。

新羅と百済、それぞれでの「降臨譚」

現存する日本最古の歴史書『古事記』と最古の正史『日本書紀』(以降、記紀)が編纂されたのは8世紀前半のことであり、卑弥呼をはじめ弥生時代の日本についての記述はない。初代天皇の即位以前については、九州南東部で3代にわたって統治を行った日向(ひむか)三代、さらにそれ以前は神話の時代(神代)となる。この神代の物語に朝鮮半島が登場する。

記紀では、まず世界が存在し、そこに神々が自然発生的に誕生、イザナキとイザナミという夫婦神の子どもとして日本列島が生まれた。

二神はその後、さまざまな神々を生み、やがて世界を分治する三柱の神(三貴子)が誕生した。すなわち、アマテラス(天上世界を統治)、ツクヨミ(夜の国を統治)、スサノオ(海原を統治)である。

しかし、スサノオは海原の統治を怠り、天上世界で乱暴狼藉を働いたことから、地上世界へ追放される。そして、出雲の地に降り立ち、この地を荒らすヤマタノオロチを退治して人身御供となるはずだったクシナダヒメを妻に娶とり、土着したと伝わる。その子孫が地上世界を開拓するオオクニヌシとなる。

『日本書紀』には、「一書(あるふみ)」という形でさまざまな異伝が掲載されている。このスサノオの降臨譚については興味深い一書がある。第八段第四の一書では、天上世界を追放されたスサノオが子のイタケルとともに新羅国(朝鮮半島南東部)の曾尸茂梨(ソシモリ)に降臨したとあるのだ。

新羅は4世紀半ばに成立し、記紀が編纂される直前の676年に朝鮮半島を統一した国である。ところがスサノオは、この国にはいたくないとして、埴土(はにつち)で舟をつくり出雲に渡ったとある。子のイタケルは天上世界から樹木の種を持ってきていたが、新羅では蒔かずに出雲に渡り、日本列島に蒔いたことから日本は木々が豊かな国土となったという。

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