「高リターンの投資先が日本にない…!」個人の投資マネーの“海外流出”を加速させる新NISA。日本経済にもたらす深刻な影響とは?
財務省「対外及び対内証券売買契約等の状況」によると、2024年1〜6月の国内の投信運用会社や資産運用会社による海外株・ファンドの買越額合計は、同期間として過去最高の6兆1639億円だった。これは同期間の貿易赤字額(4兆円前後)を上回る。また、銀行の買い越し(2207億円)を大きく上回る。
日銀の2024年1〜3月期の「資金循環統計」によると、家計金融資産のうち、投資信託の残高は24年3月末時点で前年同月比31・5%増の119兆円と、過去最高だった。家計金融資産のうちの「外貨性資産」(外貨預金、対外証券投資、外貨建て投資信託)の比率は、24年3月末時点で4・2%と、過去最高になった。
このように海外投資が増えた原因は、アメリカの株価上昇が著しいからだろう。そして新NISAが大々的に喧伝されたため、若年層を中心として、多くの人々が投資に関心を持ったからだ。また、円安の影響も大きい。
金融資産所得が優遇される本当の理由
金融資産からの収益については、総合課税でなく分離課税を選択することが可能だ。これによって、税負担は大きく軽減される(とくに高額所得者の場合)。NISAなどの少額投資非課税制度は、一定の限度で、税負担をまったくゼロとする。
分離課税選択制も少額投資非課税制度も、日本独自の制度ではなく、諸外国にも広く存在する。実際、日本のNISAは、イギリスの少額投資非課税制度(ISA)をモデルに作られたものだ。
こうした措置が必要なのは、総合課税をすると税負担が重くなるので、資金が海外に逃げてしまうからだと言われる。それを防ぐために、他の所得よりは税負担を軽減する必要があるというのだ。
しかし、本当にそうした効果があるかどうかは疑問だ。実際、日本の場合には、すでに見たように、新NISAが資本流出を引き起こした。
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