《朝ドラ あんぱん》モデルのやなせたかし 東京高等工芸学校の入学後に担任から言われた「驚きのアドバイス」

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「諸君は既に紳士である。自由に責任をもって行動してほしい。ただ一言注意しておくのは、あまり机にかじりついて勉強しているようでは碌な作品はできない。ここは銀座に近い。一日に一度ぐらい銀座に出て散歩するがいい。そこで吸収するものは、学校で習うものよりも栄養になる」

さらに担任は「図案科に入ったからといって、別にデザイナーにならなくてもいいんだぞ。小説家でも、タップダンサーでも、好きなものになりたまえ」とまで言ったのだから、まさに自由奔放。やなせたかしの目の前に、新しい世界が開けた瞬間だった。

「ここでは学生が子ども扱いされることはない」。やなせはそんな思いを抱いたという。

1日一度は銀座をブラブラした

そんな担任の教えを、やなせは忠実に守っている。本当に1日に一度は銀座に出るようにして、深夜まで過ごしたという。銀座で行き交う女性たちもまた、やなせを驚かせた。

朝ドラ あんぱん アンパンマン やなせたかし
銀座(写真: momo / PIXTA)

「ぼくの眼から見れば、女性はほとんど全部絶世の美人にみえた。たとえそれは錯覚であったとしても、どうせこの世は夢まぼろし、今、眼の前を通る人に胸ときめすことができればそれが幸福」

夢見心地になりながらも、銀座で遊ぶお金はないので、せいぜい喫茶店でコーヒーを飲むくらい。あとは、ひたすら街を散策したが、それでも十分刺激的だったという。

日本ではまだ珍しいビルやデパート、オシャレなカフェが立ち並ぶ。そして日が暮れれば、当時の銀座では、骨董屋、雑貨屋、古本屋、文房具屋など多くの露店がひしめいた。目に入るものすべてが輝かしかった。

「学校よりもはるかに多くのことを学んだ。花売娘からも、乞食からも、サンドイッチマンからも、かわいい新聞売子の娘からも、映画館のモギリ嬢からも、喫茶店のウェイトレスからも学んだ。みんなぼくの先生だった」

もっとも「軽薄なシティボーイ」を目指したものの、「生まれながらの素質に恵まれず、努力は空まわりして野暮ったさはぬけなかった」と振り返っているのが、やなせらしい。読めもしない英字新聞をときどき買うなど、若者らしく大いに背伸びをした青春時代だった。

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