欧州DMAより厳しいスマホ新法が「ガラパゴスiPhone」誕生を促す可能性。機能が制限され、ユーザー体験の低下を招く恐れも

Apple Security Researchウェブサイト(写真:Adobe Stock)
膨大な資金やエンジニアリング、その他のリソースを投資して新機能を創造したものを、『誰でもアクセスを望む人にアクセスを提供しなければならない』となれば、Appleはどうするだろうか?
例えば“AirDropによる受け渡しができない端末がある乗り換え障壁になる”からと、API開放を義務付けたとして、一時的に喜ぶユーザーはいるかもしれない。しかし、セキュリティ面での懸念もさることながら“日本でのみ新機能を開放せねばならない”となれば、日本版のみ新機能を除外するといった選択肢が生まれる。
理想と現実の埋めがたいギャップ
日本版のSSCPAが欧州DMAよりも慎重に設計されていることは間違いない。
前述したセキュリティとプライバシーへの一定の配慮条項にもそれは表れている。
しかし、そもそも“想定する問題に対して配慮しなければならない”ことそのものが、問題と言える。つまり、理念と現実との間に埋めがたいギャップがあることこそが問題だ。
- 本当に外部ストアは安全に運用できるのか?
- サードパーティ決済は、詐欺やリスクから守れるのか?
といった問題に対し、プラットフォーマー側の懸念やDMAの現状を鑑みたうえで、プラットフォーマーによる制限を許容する配慮をしているのがSSCPAだ。
目が向けられるべきはユーザーが利用しているスマートフォンの品質、利用体験ではないだろうか。
SSCPAに関する議論を振り返っても、この規制を望んだステークホルダーはスマートフォンゲームやデジタル広告の事業者団体であり、関連して外部ストアの運営を希望する企業であり、消費者サイドからの要望という側面はほとんどない。
そのうえで今後の消費者体験を高めていく端末機能の改良、イノベーションといった将来の消費者体験までをも犠牲にする可能性を残すまま、制度設計を急ぐ理由が見えないというのが率直な感想だ。
とはいえ、年内に施行されることは決まっている。
果たして、この法律が適切に運用され、副作用を発生させないよう注視していくことが必要だろう。
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