欧州DMAより厳しいスマホ新法が「ガラパゴスiPhone」誕生を促す可能性。機能が制限され、ユーザー体験の低下を招く恐れも

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しかし、将来的な機能も規制対象となる点が大きく異なる。

DMAではNFCチップをサードパーティの電子マネーアプリに開放することや、Messenger間の相互通信プロトコル公開などを具体的に求めているが、SSCPAは個別の規定を行わず「OSによって制御される機能の開放」を、サードパーティの要望に応じて義務化しているのだ。

小さな違いのようだが、これは根本的な違いだ。

誰も望まない“ガラパゴスiPhone”誕生

SSCPAの内容を、そのまま受け取るならば、ハードウェア、ソフトウェアともに独自の利便性が高い重要機能を開発した場合も、機能のAPI開放を迫ることが可能になる。

EUのDMAが各論で細かく義務を規定しているのに対し、日本は原理原則を示したうえで詳細は都度協議することになっており、制限が設けられていないためだ。

SSCPAの規制範囲は運用の柔軟性を残しつつ段階的に開放を進め、規制対象の機能やサービスは3年ごとに検討して拡大することになっている。将来の新たな技術も包含する柔軟性を持たせたいと考えているのだろう。

ここで問題なのは、Androidが業界標準のスマートフォンOSなのに対し、iOSがiPhone向けに開発されている(ほかのハードウェア製品には利用しない)独自ソフトウェアという点だ。

“ハードウェアとソフトウェア、連携サービスの組み合わせ”で構築した統合された製品である。

その“統合された製品”に追加機能を組み込むとき、他社にそのAPIや実装ノウハウを渡さねばならないとしたとき、あなたならその規制が布かれた市場に機能を、知財を開放してまで提供するだろうか?

第三者に新機能をAPIなどで開放するためには、他社に対して機能の目的な詳細を告知し、その使い方をレクチャーしなければならない。さらにそうした開放版iOSは、日本市場向けのみに開発するものとなる。

当然、APIを開放し機能をどんな開発者に対しても開放するとなれば、その動作を保証し、サポートする義務も生じることになる。

iPhoneの機能を高めるため、特定の目的で使用している技術を異なる目的で要求・使用できることになる。極論だが“パンデミック向け接触追跡技術”へのAPIアクセスを要求し、行動分析するアプリが生まれてくる余地を残すことになろう。

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