テスラの中国事業にとって、モデルSとモデルXの受注停止の痛手は直接的には軽微だ。業界団体の中国汽車流通協会のデータによれば、テスラが2024年に中国市場で販売したモデルSはわずか311台、モデルXも1553台にすぎなかった。

だが、米中貿易戦争がテスラに及ぼす本質的な影響は、もっと深いところにある。過去数年の間にテスラが世界規模で事業を急拡大できた背景には、同社最大の生産拠点である上海工場と、(世界最強の競争力を持つ)中国の部品サプライヤーの存在があったからだ。
中国市場へのFSD導入に暗雲
貿易戦争が長期化すれば、テスラの中国事業に対するさまざまな負の影響が顕在化してくるだろう。

その兆候はすでに出ている。同社は先進運転支援システム(ADAS)「FSD(フル・セルフ・ドライビング)」の中国市場への投入を急いでおり、3月17日に(中国の既存オーナーを対象にした)無料体験キャンペーンを開始した。ところが、このキャンペーンはわずか数日で一時中止に追い込まれた。
テスラが中国市場にFSDを正式導入するには、中国の所管当局の承認を受ける必要がある。だが、同社はまだ最終的な認可を得られていない。FSDの導入が遅れれば、ADASの高性能化を競う中国メーカーとの差が開き、中国市場におけるテスラの競争力低下は避けられないだろう。
(訳注:FSDの最新バージョンは、実際の走行データをAI[人工知能]に学習させて運転精度を高めている。欧米メディアの報道によれば、中国での無料体験キャンペーンの中止は、国内で収集したデータの海外移転を制限する中国当局の規制に抵触したのが原因とみられる)
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は4月11日
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