立命館宇治高等学校では、「お客様から生産者へ」をキャッチフレーズに、自ら価値を生み出す人になるべく「総合的な探究の時間」を高校3年間の学びの「核(コア)」となる教育活動と考えて「コア探究」と呼び、中堅教員がカリキュラム委員会を編成してゼロからカリキュラムを構築しました。
現在は、探究のサイクルを3年間で6回まわすことでキャリア意識を高め、探究スキル――企画力や発信力、行動力などを磨きます。
1年は、探究スキルを育む土台づくりの期間。問いを立て、学ぶことの本質を理解する探究と、学びや経験を自分の未来とつなげる力を育むことを目指す探究を行います。具体的には、2023年度から、探究活動の1つとして外部コンテスト(キャリア甲子園)を活用しています。
2年は、自分の課題設定=マイテーマを考えることを大きな目標としています。自分の興味があることからリサーチクエスチョンを立てたり、社会課題につながるテーマを自ら設定したりして論文にまとめ、3学期には、3年で自分が探究したいテーマを検討します。
3年は、1年間かけて自分のキャリアにつながるような課題を探究し、社会に発信します。アウトプット方法は、論文、起業プラン作成、実験・ものづくりなどの中から選択します。
起業プランを作ったある生徒は、環境問題の問いから始まり大豆ミートをビジネスにするプランを考え、実際に文化祭で販売をし、大学入学後も大豆製品の研究をしています。このように、コア探究で自分の興味関心から社会につながる課題を考え行動することで、自分のキャリア発達を遂げているのです。

(写真:立命館宇治中学校・高等学校提供)
また、3年のコア探究では学校外への発信も目標の1つとしていることもあり、実際に学校を越えた関わりや、学校外の方と関わり合う機会が増え、生徒は自主的に外部に発信しています。自分のやりたいことに周囲を巻き込むためには発信力も磨かなくてはなりませんが、そのためには選んだテーマをより深く調べることが必要になる。まさに探究のサイクルが回っているのです。
探究と教科との連動で教員のマインドが180度チェンジ
一方、生徒の自ら考え、行動する力は、探究の時間に限らず、各教科で発揮しなければ意味がありません。
現在1・2年では、学年主任と担任がコア探究を担当し、3年は、副担任やほかの教員も加わり、ゼミ形式としています。「探究の取り組みにより教員の意識も少しずつ変わっていった」と酒井氏。
初年度にコア探究のプログラムを作った2年目の教員は、進学優先の価値観が180度変わったそうです。それまで自分もセンター試験でよい点数を取ることを目標として勉強してきたので、生徒が点数を取れるようにわかりやすい授業をすることを心がけてきた。
だから探究なんてやりたくなかったが、コア探究のプロジェクトを通して、授業の目標が、生徒自身が考える力を育てることに変わり、その見方と捉え方を広げる授業を心がけるようになったのです。