小学校の人気者が、中学で孤立もーー46%がいじめを経験する「発達障害の子どもたち」の苦悩 周囲の大人は何ができるか

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注意すべき点は、発達障害というのはあくまでも総称で、「発達障害」という疾患はありません。発達障害とは、生まれながらにあるなんらかの脳機能の偏りによってもたらされる状態の総称で、健常者の一部とすべきものから、疾患として扱うべきものまで多様です。この偏りにより、症状が出たり、不適応行動が起こったりします。

ASDとADHDの違い

昭和大学附属烏山病院の元院長岩波明氏

発達障害の主要な疾患に、ASDとADHDがありますが、この2つを区別する診断が非常に難しことがみられます。特に児童期は本人の訴えをなかなか医療側がキャッチできないため、大人の診断よりも難しくなります。海外の報告を見ても診断に揺れがあります。そのため、本来はADHDの子がASDと診断されているということが少なからず起きています。

ASDとADHDについては、どちらか片方の特性のみを持つケースよりも、両方の特性を持ちつつ、いずれかの特性が強く出ているということが多いため、確実な診断が難しい例が少なくありません。ADHDとASDとではどのような違いがあるのかを簡単に説明すると、以下のようになります。

ASDの症状
1, 対人関係、社会性の障害
2, 常同的、強迫的行動 (同一性へのこだわり)
3, 言語発達の遅れ

ASDは、以前の診断基準ではPDD(広汎性発達障害)と呼ばれていた疾患とほぼ同一のものです。PDDには、アスペルガー障害(アスペルガー症候群)や、自閉性障害(自閉症)などの下位分類がもうけられていましたが、現在の診断基準においては、軽症のものから重症のものまで全体をASDとして扱っています。

ASDは子どもの場合は特定のものへのこだわりの強さが1つの特徴になります。例えば、ある小学生では、愛読書が漢和辞典で、何時間も続けて難しい漢字もどんどん覚えて読んでいくというようなことがみられました。規則的な動きが好きなことが多く、時計の振り子を長時間ずっと見ているといった症状もあります。また、自分の行動についても規則的であることを好むため、いつもと違う道順で行こうとすると非常に嫌がるということも起こります。

また、野菜しか食べないなど偏食という形でこだわりの強さが出ることもあります。好みはある時期ある時期で変わることもあるのですが、強いこだわりを持つという特性は変わりません。言葉の発達の遅れや、会話の時に視線を合わせないなどもADSの特徴ですが、全例にみられるわけではありません。

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