アメリカが先導する「ディストピア的世界」の予兆 ビジネス界も多様性に「ノー」と言い始めた

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この影響は、教育にも及んでいる。制度的な人種差別やジェンダー不平等を論じる書籍は発禁になったり、異議を唱えられている。社会から疎外されたコミュニティーの闘争を軽視する、白塗りされた歴史が強化されているのだ。

予想外だった変化のひとつは、保守的な政治家だけでなく、シリコンバレーで最も影響力のある企業リーダーたちからもDEIが拒絶されていることだ。マーク・ザッカーバーグのような経営幹部は、企業のDEIへの取り組みに公然と疑問を呈し、規模を縮小している。

アメリカ企業は政治的な圧力だけでなく、経済的な変化も受けて、ダイバーシティに対するスタンスを見直しつつある。多くのエグゼクティブは、DEI採用が効率性を損ねたり、純粋に実力に基づかない採用につながったりする可能性があると主張している。

ビジネス界もDEIに対して「ノー」

かつては進歩的な立場をとっていたテック業界のリーダーたちも、今ではDEIに反対する保守派の主張に同調するようになっている。これは、アメリカの多様性離れが、文化的なものにとどまらず、経済的なものであることを示唆している。

マイクロソフト、アップル、コストコは、DEIプログラムの廃止を求める声を拒否しているが、マクドナルド、フォード・モーター、ジャック・ダニエルズ、モルソン・クアーズ、トラクター・サプライ、ディア・アンド・カンパニー、アマゾン、ウォルマートなどは、DEIの雇用慣行を縮小したり、ダイバーシティ・リーダーの役割を廃止したり、外部のダイバーシティ・ベンチマークから距離を置き始めた。

アマゾン創業者のジェフ・ベゾスは、個人として保有するワシントン・ポスト紙のオピニオン欄をリバタリアンの理想に沿ったものに一新し、長年の購読者からの反発を招いた。大手資産運用会社であるブラックストーン・グループのスティーブン・シュワルツマン最高経営責任者(CEO)は、トランプ支持を鮮明にし、アメリカ企業とDEI拒否派との連携を強めている。

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