パナソニック、次世代テレビは“不戦敗” 重すぎた「プラズマ集中」のツケ《下》
日立は08年のプラズマ撤退に伴い、提携先の中国チャンホンに生産ラインを移転。日本人技術者もチャンホンに移籍し、ライン立ち上げに力を注いだ。その後、多くの技術者が帰国したものの、現在も複数人が残って働いている。
日本の製造装置や材料メーカーも、韓国や台湾、中国での生産ライン立ち上げに尽力した。液晶、プラズマともに、装置と材料は日本勢が高シェアを握る。増産投資に及び腰の国内と違い、肥沃なアジア市場でのビジネスチャンスに飛びついた。
瞬く間に、日本の生産技術は世界へ広がった。高品質なテレビ用パネルは汎用品となり、日本や韓国、中国のどこで生産しても差別化が難しくなって価格競争へ突入。供給過剰に陥って価格が暴落し、11年度は世界トップシェアのサムスンまでもが液晶部門は赤字に沈んだ。
中小型パネルに吹いた“アップル特需”の神風
総崩れの中、液晶勢の雄であるシャープに、意外な神風が吹き始める。世界中でアイフォーンをヒットさせたアップルの存在だ。これまでアイフォーンの液晶パネルは、LGと東芝モバイルディスプレイの2社購買だったが、品薄を受けてシャープにも話が舞い込んできた。
アップルは東芝モバイルディスプレイとシャープにそれぞれ1000億円を投じて、専用パネルライン設置に乗り出した。今年春にも稼働を開始する。昨年からシャープは中小型液晶パネルの増産に舵を切り、テレビ用パネルの生産を大幅縮小。「世界の亀山モデル」としてブランドテレビの象徴となった亀山工場の大半を中小型液晶ラインに転換し、「儲からないテレビ事業はやらない」(片山幹雄社長)と、一部テレビを中国への委託生産に切り替えた。
パナソニックも姫路の液晶パネル工場をテレビから中小型向けに転換。千葉の茂原工場は、ソニーと東芝、日立の中小型液晶部門の統合会社「ジャパンディスプレイ」(今年春設立)に売却を決めた。