IT企業が踊り出す“ビッグデータ”狂騒曲 顧客企業はまだ様子見 個人情報など課題山積
ニューヨーク(米国)。真夜中、ピザ屋で強盗事件が発生し、大金が盗まれる。翌朝、自宅に戻った強盗犯。すると家の前には警察官が待ち構えていた。
バンガロール(インド)。ある消費者が携帯電話事業者の変更を考え始めた矢先、現在契約している事業者から割引クーポンが送られてきた。結局、今回は変更を見送った。
和歌山(日本)。ミカンの生産量日本一を誇る和歌山県。有田市のミカン畑では、農業を始めたばかりの若者でも、失敗することなく甘くてつややかなミカンを栽培することができるようになった。
これらに共通するのはIT企業が「ビッグデータ」の活用事例として挙げているものだ。
ニューヨーク市警は2005年、米IBMと組んで「リアルタイム犯罪センター」を設立。そこでは24時間、コンピュータで事件記録、逮捕歴、パトロール情報などが照合できる。かつては紙の書類をめくって情報を探し出していたが、今では現場の警察官に必要な情報だけがすぐに届く。また、センターに常駐しているスタッフが、収集された情報を分析して容疑者の人物像や行動パターンをあぶり出すことで、犯罪捜査が効率化されたという。
IBMはインドの通信事業者に、契約者の情報を分析して離反顧客の行動パターンの顧客を抽出し、離反予備軍に集中的にキャンペーンができるサービスを提供している。
富士通は和歌山県有田市のミカン農園と共同で実証実験に取り組んでいる。畑の5カ所にセンサーを設置して、気温、土壌の湿度などを自動計測。5000本のミカンの木にはID番号を振って成長の記録を管理。経験に乏しい若手農業家でも、ベテラン農業家に負けないおいしいミカンの収穫を可能にしている。