IT企業が踊り出す“ビッグデータ”狂騒曲 顧客企業はまだ様子見 個人情報など課題山積
こうした変化を新しいビジネスチャンスととらえ、IT企業は動きだした。先行したのはIBMだ。08年、「スマータープラネット」を提唱。ニューヨーク市警の案件などを例に、エネルギー、防犯、交通などさまざまな問題をビッグデータで解決できると打ち出し、巨額システム案件を次々と獲得していった。
10年前後からは、ビッグデータ分野の強化を狙ったM&Aが米大手IT企業で目立つようになる。遅ればせながら富士通、日立製作所、NTTデータなど国内大手もビッグデータ事業へ続々と参入している。
市場の可能性に加え、大手IT企業がビッグデータに期待をかけるのには別の理由もある。
近年のIT業界のもう一つのトレンドに、インターネットを通じてソフトを活用できる「クラウド」サービスがある。ここでは米セールスフォースなど新興企業の攻勢が激しく、既存IT企業は押されぎみ。顧客のつなぎ留めにはクラウドを推し進めるしかないが、ハードを売ってきた既存IT企業にとっては売り上げの減少につながりかねない。一方、経営データを活用するビッグデータは、うまく売り込めば顧客企業の囲い込みになる。むろん、それなりの収益も期待できる。
顧客企業はまだ様子見 個人情報など課題山積
「ビッグデータを活用できるかどうかで、今後の企業の競争力は決まってくる」。IT企業はこうしたセールストークでビッグデータ関連ビジネスを売り込もうとしている。しかし、現状では顧客企業との温度差はまだまだ大きいようだ。