漫才・コント競う「ダブルインパクト」秘める可能性 他の賞レースとどう差別化を図っていくか
2023年には、芸歴5年目以下を対象とする吉本興業主催の『UNDER5 AWARD』、結成16年以上の漫才師がタイマンで戦う『THE SECOND~漫才トーナメント~』(フジテレビ系)が始まるなど、賞レースは年々増加傾向にある。
こうした流れは、今も強い影響力を持つM-1によって促されたところが大きいように思う。そのシステムの秀逸さは、続いて始まったR-1やキングオブコントにも少なからず影響を与えている。
例えばR-1は、敗者復活戦の導入・廃止を繰り返し、昨年2024年からは公式YouTubeに予選のネタ動画をアップし始めた。キングオブコントとともに番組のオープニングで流される煽りVTRに力を入れ始めたのもM-1に準じた印象が強い。
漫談、コント、フリップネタ、ものまねなど、ジャンルを問わないピン芸日本一を決める大会ゆえに、安定感のあるM-1のシステムに寄せていったことが考えられる。
一方、キングオブコントの初期は、M-1とは違う独自路線を選択しているように見えた。2008年から2014年までは準決勝敗退者による審査によって王者が決定し、2009年から2013年まではファイナリストすべてがネタ2本を披露している。
しかし、2018年からはネタ2本の総合得点で優勝者を決定する独自のシステムを継続しつつ、M-1に準じてファイナルステージ進出者3組による決戦となった。番組の放送時間を含め、3組の対決のほうが見やすいという判断に至ったのだろう。
既存の大会との違いを示すことが重要
優勝すれば「賞金1000万円」、準決勝で敗れた者が番狂わせを起こす「敗者復活戦」、ファイナリストの名前が書かれた棒を引いて出順を決めていく「笑御籤(えみくじ)」など、M-1は臨場感を高めるための演出にも秀でている。
芸歴、所属事務所、プロ・アマの制限を設けず、即席ユニットでも出場可能としたことで、予選の段階から盛り上がりを見せるのも特徴だ。また、2015年からネタ動画に対する一般視聴者の評価によって準々決勝敗退者が準決勝へと勝ち上がる「ワイルドカード」が始まり、大会に別の魅力を生み出した。
昨年、ニューヨークの「ラブソング」(2019年のM-1決勝ネタ)を完コピしたラパルフェの動画が“ほぼ反則”と注目を浴び、勝ち上がれなかったにもかかわらず『ラヴィット!』(TBS系)といったバラエティーで活躍したことも記憶に新しい。“M-1の影響力”を生かし、優勝を目指す者とは別の戦い方さえ生まれている。
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さらには、ファイナリストらによる「M-1グランプリ スペシャルツアー」が恒例化するなど、賞レースをみるみる拡張しイベント化していったM-1。とはいえ、新たに立ち上がった『ダブルインパクト』が、そのフォーマットを追うのは得策ではないように思う。
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