「財源は罰金?」中国地方政府"ご乱心ぶり"の根因 財政難で、あくらつな罰金徴収が広がっている

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しかし、経済がいったん後退局面に入ると、今度は逆方向の競争が起きる可能性がある。どれだけ健全な財政にできるかというゴールの異なる競争が始まり、すべての地方政府が歳出を削減した結果、国全体で経済に悪影響を与える緊縮財政に向かってしまうのだ。

すでにそうした動きは始まっている。アメリカのウォールストリート・ジャーナル紙は、財源不足に苦しむ地方政府が、公共交通機関や安い文房具の利用、行政文書の両面モノクロ印刷の推奨、食べ残しを出さない、出張を減らす、公用車やオフィス家具の修理・再利用など、公務員に対し「倹約生活に慣れる」よう指示を出している、と報じている。

また、2024年5月には、広州や上海など中国全土の10以上の都市で、水道料金の対前年比10~50%引き上げ、およびガス料金の5~20%引き上げなど、公共料金の大幅な引き上げがあった。

さらに経済を悪化させるという弊害

さらに冒頭であげたような動きまで広がる。2024年6月には、複数の上場企業が多額の税金未納分を支払うよう、当局から要求されている。

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財政難を罰金徴収により補うため、交通ルール違反や無許可営業の摘発を強化したり、徴収する罰金の額を引き上げたりする地方政府も増えている。中には、東北部・遼寧省盤錦市のように「罰金の街」として有名になるケースさえある。罰金や恣意的な費用徴収を財源とする、1990年代の「乱収費」が復活するかのような動きだ。

景気が低迷し、民間部門の消費・投資需要が伸び悩んでいる時には政府部門が支出・投資を増やす必要がある。さもなければ、経済が縮小してしまうからだ。しかし、現在の中国における地方政府の緊縮的行動は経済を支えるどころか、民間部門からさらに資金を吸い上げ、景気をより悪化させるものだ。

過度に分権化された地方財政は、好況期には経済成長を加速させる役割を果たした。だが景気後退期においては、相争って緊縮的政策を行わせることで、さらに経済を悪化させるという弊害を生んでいる。

参考文献
田畑伸一郎・梶谷懐・福味敦(2019)「ロシア,中国,インドの中央・地方財政関係の比較」『比較経済研究』第56巻第1号
梶谷 懐 神戸大学大学院教授

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かじたに かい / Kai Kajitani

1970年生まれ。現在、神戸大学大学院経済学研究科教授。専門は現代中国の財政・金融。著書に『現代中国の財政金融システム』(名古屋大学出版会、2011年、大平正芳記念賞受賞)、『中国経済講義』(中公新書、2018年)などがある。『週刊東洋経済』にて「中国動態」を連載中。

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高口 康太 ジャーナリスト

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たかぐち・こうた / Kota Takaguchi

ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国の政治、社会、文化など幅広い分野で取材を続けている。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)、『中国「コロナ封じ」の虚実』(中公新書ラクレ)。

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