「財源は罰金?」中国地方政府"ご乱心ぶり"の根因 財政難で、あくらつな罰金徴収が広がっている

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一方で歳入を見ると、2014年以降では、中国は50%弱。60%前後のロシア、インドと比べればやや少ないとはいえ、歳出ほどの圧倒的な差はない。つまり、中国は歳入と歳出で中央政府の比重が大きく異なっている。

歳入が多いのに歳出が少ないとなれば、中央政府の財政が潤沢なのも当然だ。もちろん、その資金を貯め込んでいるわけではない。中央財政にカウントされた資金も一定額は、補助金などの形で地方に移転される。

「税収が多く支出が少ない中央政府」とは、ひっくり返せば「税収が少なく支出が多い地方政府」が存在することを意味している。地方政府が財政難で、独自財源に頼らざるを得ないのには構造的な要因があるというわけだ。

今度は逆方向の競争が起きる可能性

支出の多くを地方政府が担うことから中国財政は地方分権的と言われている。問題は財政が地方分権的なことが、地方政府が均衡財政を志向する背景となっていることにある。

それは地方政府債務の不安定性が関係している。通貨発行権を持たない地方政府の債務は、中央政府の債務よりもはるかに不安定だ。日本政府は2022年時点で対GDP比257.2%と世界でも突出した債務残高を抱えているが、現時点では政府債務は安定している。これが可能なのは日本の財政制度が基本的に中央集権的であることも一因だ。

一方、通貨発行権を持たない地方政府の債務は不安定であり、債務拡大に対して慎重にならざるを得ない。すなわち、均衡財政を志向せざるを得ないわけだ。ゆえに国家財政に占める地方財政の比率が大きければ大きいほど、国全体としても均衡財政主義が採用されやすくなる。

中国のきわめて分権的な地方財政は、「事実上の財政連邦制」とも呼ばれ、地方政府が中国の高度成長を支えるというポジティブな側面からも評価されてきた。高い経済成長率が持続している、言い換えれば中国全土で収益性の高い投資機会が豊富にある状況では、地方政府同士が競い合ってインフラ建設や企業の誘致、育成に邁進するというインセンティブが与えられる。そのように、地方間の激しい競争が国全体の高成長につながっていった。

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