「中受」の現実?校長経験者が激白「高偏差値の中高一貫校で退学者続出」の背景 「失敗できない」高学歴教員が巧みに排除の闇

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「実際、偏差値70の中高一貫校では、中1の1学期を終えた時点で数学の授業についていけなくなる生徒が何人も出ました。成績が落ちた生徒は、やる気がどんどんなくなり、ふてくされた態度をとるようになります。ある生徒は、『気を抜いてちょっとよそ見したら、すぐにわからなくなった感じ。新幹線みたいだった』と呟いていました。教員はこのような生徒に構わず置き去りにしてしまうんですね」

「今日から“殿上人”」?校長会で耳を疑う衝撃発言

この現象は、中学受験でしばしば問題視される「燃え尽き症候群」とはやや様相が異なり、「入学後の教員の対応に問題がある」というのが豊島さんの見立てだ。

「長年の教員経験で感じるのは、児童・生徒全員が同じスタートラインに立てる『小1』『中1』『高1』が非常に重要ということです。このタイミングで、担任が児童・生徒に対して1人の人間として接すれば、子どもたちは生き生きと成長していきます。

ところが、とくに小1や中1の場合、一部の教員は児童・生徒を必要以上に子ども扱いしてしまうんです。例えば、言うことを聞かない児童生徒を、事情も聞かずに押さえつけたり、排除しようとしたりしてしまいます。『支配』『強制』『監視』『命令』の要素があると、クラスは荒れてしまいます」

これは、私立学校だけでなく公立学校でも同じだという。別の中高一貫校で校長を務めた後に、公立小中学校のコンサルタントも経験した豊島さんが気になるのは、校長の姿勢だ。

「公立校の校長時代に参加した、地域の校長会での出来事が忘れられません。会長が、教頭から校長になったばかりの先生を壇上に集め、『あなたたちは、今日から“殿上人”になりました』と言ったのです。当時すでに教員歴は30年近かったので、学校特有の雰囲気は熟知していたつもりでしたが、公立学校は想定以上にヒエラルキーがあるのだと痛感しました」

この「教員のリアル」の連載でも、強い権力を持つ校長に配慮する教員が多く登場している。その背景にあるのが、人事評価制度「教職員評価システム」だ。2016年度から全都道府県で導入され、教員の能力と業績をA〜Dの4段階で評価する。この評価が給料にも反映されるのだが、評価者が校長のため、教員はどうしても校長を見ながら仕事をすることになる。

「この構造をとるのであれば、校長の見識が非常に重要だと思います。しっかりしたビジョンを持って、先生たちを導くべきです。しかし、実際校長たちは教育委員会ばかりを向いているように見えます。校長がこういう姿勢を取るから、先生たちも児童生徒ではなく校長の様子を窺ってしまうのではないでしょうか。本来は、校長自らも児童生徒に向き合い、先生方の先頭に立って子どもたちに教育を施す姿を見せる必要があるはずです」

豊島さんがこう話すのは、豊島さん自身が教員駆け出しの頃に、校長や理事長から綿密な指導を受けたからだ。

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