半導体のルネサス、悲願の黒字達成後の試練 車載半導体に業界再編の波、首位転落の危機
しかし、この好機をとらえるうえで懸念されているのが、大震災をきっかけにした、海外半導体メーカーによるシェア侵食だ。
かつてのルネサスは、個々の顧客の要望に応えた、カスタマイズ製品を多く請け負っていた。ところが、大震災により那珂工場が被災したことで、トヨタ自動車をはじめ国内自動車メーカーの生産が停滞。あらためてルネサス製マイコンへの依存度の高さが浮き彫りになり、複数の日本車メーカーが海外の半導体メーカーとの取引を検討するきっかけになった。
外資への対抗策として、ルネサスは半導体の単品販売から脱して、複数の製品を組み合わせたソリューションを強化。さらに他の車両との衝突を避けたり、車線からはみ出したりすることを制御する、先進運転支援システム(ADAS)関連の製品開発などに注力。「業界標準化」の実現を目指している。
製品群の見直しによって、採算の改善にも取り組んできた。カスタマイズ品の多さは、汎用品を大量生産している海外のライバルに比べて、ルネサスの粗利益率が低い一因と指摘されていた。しかし、「製品の種類は年々減少している」(大村隆司執行役員)と、自ら変革を推進している。
強者連合がライバルに
だが、世界のライバルは、規模で攻勢をかけてきた。今年3月、業界大手の蘭NXPは、米フリースケールを買収すると発表。年後半にも統合が完了する見通しで、車載半導体でルネサスを抜き、世界シェア1位に躍り出る(上図)。NXPは車載ネットワーク用トランシーバIC(集積回路)などでシェア1位、フリースケールは車載用マイコンでシェア2位という、“強者連合"だ。
ルネサスの遠藤隆雄CEOは、「弱い部分を補完する企業があれば買収するターゲットになる。が、キャッシュがそれほどあるわけではないので、今は大胆な手は打てない」と、今年6月の就任会見で慎重な姿勢を見せた。
悩ましいのが、産業革新機構が69%を保有する、ルネサス株式の受け皿対策だ。2012年12月に出資を決めた際、産業革新機構の能見公一社長(当時)は、「5~7年はルネサスを支える」と明言し、「原則、その方針は変わっていない」(広報担当)。早ければ2年後にも、エグジット(投資回収)に向けた動きが具体化する可能性もある。
革新機構が保有する株式の時価は、足元で7000億円前後にまで膨張。すべてが市場で売却されるとは考えにくい。NXP、フリースケール連合に対抗できるような引き受け先を見つけることが、今後の課題となる。
(「週刊東洋経済」2015年10月3日号<9月28日発売>「核心リポート03」を転載)
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