新築を売るデベロッパーは、一度に多くの住戸を売り切る必要があり、最高値を狙いづらいが、個人売り主は「なけなしの一戸」を少しでも高値で売りたい気持ちが強い。その証拠に売却時に仲介会社を選ぶ基準は最高値を提示した会社になりがちだ。それがベストな選択ではないと考えるが、それはまた別の機会に説明したい。
相場より高額な成約事例が出ると…
実例を示そう。パークコート浜離宮ザタワーを見てみよう。記事執筆現在、売りに出ている70㎡台の住戸はすべて4億円以上、坪単価にしておよそ1800万円だ。港区の中でも一部の高額エリアで坪1000万円を超えるようになったが、この物件がある浜松町駅付近はそのような相場ではない。そうなった理由は、外国人が相場とかけ離れた4億2500万円で購入した成約事例が不動産業界のデータベースに登録されたからだ。
こうなると、仲介業者は「物上げ」といって、入居者に「4億円で売りませんか?」と営業をかけて専任契約を結びたがる。それまで成約事例は2億円台だったところから一足飛びに4億円になっているが、同じように買う“二匹目のどじょう”がいるかは疑わしい。とはいえ、一旦専任契約を結び、売る気にさせているので2億円台まで下がったとしても成約する可能性はある。成約すれば物件価格の3%が入ってくる仲介としては「おいしい」のである。
こうなると、仲介業者だけでなく売主も4億円という数字に強い印象を抱く。これは「アンカー価格」と呼ばれ、4億円が基準になることで売買行動に影響を与える心理効果を「アンカリング効果」という。心理学では認知バイアスの1つとされ、合理的な判断や思考を阻む要因となり得るのだ。
今後、こういった事例がタワー物件の成約事例として多数出てくる可能性がある。大局的に見ると、マンションの中でも、タワーの独歩高になるには十分な状況にある。そんな中、タワーは修繕積立金が高騰しているとかいって購入をためらう人がいるが、価格の高騰と修繕積立金の高騰を天秤にかけたほうがいい。価格は1000万円単位で動くが、修繕積立金は月数万円増額の問題にすぎないのだ。
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