「インフラ更新が心配」な街ランキング・南関東編 更新費用が2倍以上に膨らむ自治体は全体の4割

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①神奈川県海老名市(増減率:1241.2%)

相鉄線や小田急線の駅のほか、東名高速道路の海老名サービスエリアを有し、東京都心や横浜方面への通勤者のベッドタウンとして発展してきた海老名市。海老名駅東口では土地区画整理事業が進行中で、さらなる発展のポテンシャルを秘めている。

同市の「海老名市公共施設再編(適正化)計画」(2024年2月改訂)によると、現在のインフラの維持・管理(修繕)にかけている予算は年間約4.6億円。それに対して、同市が2023年から2062年までの40年間で再試算を行ったところ、公共施設全体にかかる将来費用の総額は2456億円(年平均61.4億円)となった。この「4.6億円」と「61.4億円」を、人口動態を加味して割り出した増減率は「1241.2%」と、今回の対象自治体の中で最大となった。

当初(2017年)に策定した計画では、同市は更新に必要な投資限度額を年間21.1億円と見積もっていた。ところが、改訂にあたって将来費用を再度積算してみたところ、年間の平均額が61.4億円となり、年間40億円近くのギャップが生じた、と同計画に明記している。

こういった更新費用の積算においては“鉛筆をなめる”ことはできるものだが、できるだけ正確な積算を行い、不足額を隠さずオープンにしようとする姿勢がうかがえる。また、同市では市民アンケートや5回にわたる市民ワークショップなど、計画策定のプロセスに民意を反映させる努力もしている。

大半の自治体では、更新費用を圧縮するために公共施設の閉鎖や統廃合などの削減方針を打ち出している。しかし、一方的な削減方針は利益を享受している住民との間に軋轢を生みかねない。この点においても、市民参画のプロセスを設け、丁寧に合意形成を図ろうとする同市の姿勢は評価できる。

とはいえ、年間40億円のギャップは確かに大きい。同計画では、公共施設の再編や長寿命化、予防保全型改修の導入などによって約40億円のギャップを最小化する方針を示しているが、計画に沿って適切な予算措置がなされるかが今後の注目ポイントだ。

公共建築物の面積を今後30年間で26%削減

②千葉県袖ケ浦市(増減率:898.6%)

千葉県の中西部、房総半島の西側に位置する袖ケ浦市。東京湾アクアラインと直結する連絡道が通り、交通利便性のよさから都心通勤者も多い。

同市の管理計画(2022年3月改訂)によると、インフラの更新費用は直近の年間6.0億円から、将来には同59.0億円に増大する。長寿命化対策を加味しても同34.8億円と、大幅に増えることに変わりはない。

今後の削減目標について、同計画では公共施設(いわゆるハコモノ)のみについて定めており、「年間8.2億円の不足が見込まれる」としている。そのギャップを埋めるため、「公共建築物の保有量(面積)を今後30年間で26%削減する」との目標数値を定めている。

一方、インフラや下水道については「本市においては量の削減が現実的ではない」ことを理由に数値目標を設定せず、「当面は、長寿命化等の対策により維持管理費用等の縮減に努めます」と言及するにとどめている。

また、維持管理の方針も「計画的な修繕等により適正な維持を図っていきます」「長期的な視点による効果的、効率的な維持管理を行うため、施設の長寿命化を図っていきます」と抽象的な文言が並び、具体的にどう取り組んでいくのかがやや見えにくい印象だ。

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