消える「伝統的気動車」ハイブリッドに交代の背景 メンテナンス性向上、「税制面の優遇」も利点?
他社でも導入例は増えている。JR九州は2020年3月から「YC1系」を長崎地区に投入。佐世保線や大村線、長崎本線など同地区の非電化路線は従来型の気動車からハイブリッド気動車による運行に切り替わった。
JR東海も2022年7月以降、特急「ひだ」「南紀」にHC85系を投入している。意外なところでは、JR西日本のクルーズトレイン「TWILIGHT EXPRESS瑞風」もハイブリッド気動車だ。
ハイブリッド式の気動車は、エンジンによって発電し、その電力でモーターを動かすとともに、余剰電力や回生ブレーキで発電した電力をバッテリーに貯めて使用する。一方、バッテリーを搭載せず、エンジンで発電した電力でモーターを動かす「電気式気動車」もある。バッテリーを搭載しない電気式気動車のほうがシステムとしては簡便だ。JR東日本は2018年からこの方式の気動車「GV-E400系」を新潟地区や秋田地区に導入している。
「税制面の優遇」もある
ハイブリッド気動車や電気式気動車の利点の1つは、モーターで走るため電車と機器を共通化できることだ。従来型のディーゼルカーは「液体式」と呼ばれ、車体の床下に積んだエンジンの回転力を「液体変速機」で調整し、推進軸を通じて車軸に伝えるが、これらのメンテナンスは手間がかかる。気動車より電車のほうが両数が多い鉄道会社であれば、多いほうに合わせることができ、手間やコストの削減につながる。
また、従来型の気動車に比べて環境性能に優れているとされる。例えばJR東海のHC85系は従来型のキハ85系に比べて燃費が約35%向上しており、これに加えて燃料噴射量などを細かく制御する仕組みの採用で排出する二酸化炭素を約30%、窒素酸化物を約40%削減しているという。
バッテリーを搭載しない電気式でも、JR東日本のGV-E400系は「当社で主力の(従来型気動車)キハ110系と比べ、エンジン単体で窒素酸化物(NOx)を約6割、黒煙などの粒状物質(PM)を約8割減らせる」という(2020年9月21日付記事『地方を強く、JR東日本「ローカル線戦略」の全貌』)。
このような点から、実は税制面でも優遇措置が設けられている。
国土交通省鉄道局は、鉄道局関連税制として環境関連税制をウェブサイトで公開している。例えば「低炭素化等に資する旅客用新規鉄道車両」(特急用車両などを除く)について、用件を満たせば取得後5年間、固定資産税の課税標準を5分の3(中小事業者以外は3分の2)に軽減するという特例措置がある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら