消える「伝統的気動車」ハイブリッドに交代の背景 メンテナンス性向上、「税制面の優遇」も利点?

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この要件は、旧型車両を代替する場合であれば「1:一定の要件を満たすVVVFインバータ制御装置と、2:電力回生ブレーキの双方(気動車にあっては1のみ)」とされている。VVVFインバータ制御装置は現在の電車で主流のシステムで、従来型気動車にはないがモーターで走るハイブリッド式や電気式の気動車はこれを搭載している。

GV-E400
JR東日本の電気式気動車GV-E400系(編集部撮影)
HB-E210系
仙石東北ラインで活躍するハイブリッド車両のHB-E210系(編集部撮影)
【写真】JR東日本は水素燃料電池とバッテリーを使う「水素ハイブリッド電車」も試験中。青い車体が目印のFV-E991系「HYBARI(ひばり)」

また、「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」でも鉄道車両が対象となっている。二酸化炭素排出量を削減した車両を導入した場合、炭素生産性が3年以内に10%以上向上すれば税額控除10%または特別償却50%、7%以上向上すれば税額控除5%または特別償却50%となる。この中にハイブリッド車両も入っている。

単純に言えば、従来型の気動車を新造するよりもハイブリッド式や電気式のほうが税金が安くなることになる。

その点も踏まえて、鉄道各社はハイブリッド式などの気動車を導入しているのだろうか?実際に聞いてみた。

今後も増えるハイブリッド・電気式

まずJR九州に聞いた。同社によると、YC1系の新製にあたっては固定資産の減免を活用しているが、ハイブリッド気動車にしているのは税制面の優遇を受けるためではなく、近年の燃料コスト高騰への対応、二酸化炭素排出量や騒音などの低減といった地球環境への貢献の観点からだという。

HB-E220系を導入することになったJR東日本にも聞いた。税の減免については回答がなかったが、環境への負荷低減と、液体式気動車特有部品の削減や電車と同様の機器の採用によるメンテナンス性向上を意図して、ディーゼルハイブリッド気動車を導入することにしたという。

税制がメリットになるのは、JRよりも中小私鉄や第三セクターであろう。今後はこれらの鉄道会社でもハイブリッドや電気式気動車を導入するケースが増えていくのではないだろうか。

HB-E220 2両編成
HB-E220系・2両編成仕様のイメージ図(画像:JR東日本)
【写真】従来型気動車の代表格といえばこの車両、国鉄型のキハ40系

冒頭で述べた、JR東日本が2025年度下期から営業運転を開始する予定のHB-E220系は、高崎エリア(八高線・高麗川―高崎間)に2両編成8本、盛岡エリア(東北本線・花巻―盛岡間、釜石線)に2両編成6本、1両編成4本が投入される。合計は32両で、同社が近年導入を進めてきたGV-E400系が計63両であることを考えると規模は大きい。

また、JR四国もローカル線向けとしてハイブリッド式気動車を導入する予定だ。地方の三セク鉄道でも、天竜浜名湖鉄道(静岡県)が従来車両の置き換えとして電気式気動車を導入するとしている。気動車の主力は「伝統的」な液体式から、ハイブリッド式や電気式になりつつある。

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小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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