福岡の「おひとり様の終活」に視察が相次ぐ背景 福岡市社協が自分らしい最期のためのサポート
もともと身寄りがなかったが、この事業を通じて親族関係が修復したケースもある。
80代の男性は、離婚した妻と暮らす娘がいたものの、何十年も音信不通のため、死後事務の契約をした。
「遺言を書くとき、娘に財産を渡したいと言われて、遺言作成を依頼していた弁護士が調査して娘の連絡先を把握しました。センターでは、父と娘それぞれに連絡を取っていたところ、最近は親子で直接やり取りするようになったようで、うれしく思っています」(吉田さん)
ある60代の男性は、ガンの末期で余命宣告されたが、身寄りがまったくおらず、本人は特に準備をされていないため、入院先の病院から社協に相談が入った。スタッフが病院に訪問して本人の意思を確認のうえ、死後事務を契約。
「病気の影響で痛みが出て、気分の波もあったので、通常より短時間の面談でスピーディに契約しました。場合によっては介入が遅くて、本人の意識レベルが急に低下し、契約の意思を示されたのに契約までたどり着けないケースもあるので、契約できてホッとしました」(吉田さん)
本人が準備をしないまま病院や在宅で亡くなると、病院や自治体が親族を探し、見つからなければ自治体が火葬する。行政がやむなく火葬した後、実は親族がいたというニュースもたびたびあり、難しい問題となっている。
死後事務事業は契約して終わりではない
福岡市社協の死後事務事業は、契約して終わりではない。契約者にスタッフが定期的に連絡や訪問をして、本人の状況を把握する。判断能力が低下してきたら成年後見制度につなぐなど、状況に応じてサポートを続ける。
「死後事務委任事業は亡くなったときだけの事業というイメージがあるかもしれませんが、契約後に亡くなるまで10年20年と生きている間の支援がかなり大事です。ただ、関係ができると、私たちに家族のような動きを求められることも。例えば、電球交換に来てほしい、手術中に何時間も待機しておいてといったことは、気持ちはよくわかるのですが、こちらも人員が限られているため十分には対応できないところです」(吉田さん)
終活サポートセンターの取り組みは注目を集め、各方面から問い合わせが絶えない。
北海道から沖縄まで全国の社協や行政、議会をはじめ、韓国や台湾など海外からも視察に来られて、今年度の半年間だけで視察や問い合わせは47件にのぼる。福岡市社協のモデルをそのまま、もしくは参考にして導入したところも多い。
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