福岡の「おひとり様の終活」に視察が相次ぐ背景 福岡市社協が自分らしい最期のためのサポート
配偶者が先立ってひとりになった人や、身体が動かなくなってきて準備しなければという人はもちろん、意外にも子どもがいる人からの相談も結構あるという。
「お子さんが関東など遠くで働いていると、自分の死後に仕事を休んで手続きしてもらうのは申し訳ない、迷惑をかけたくないと死後事務の相談に来られます。でも、預託金を預かる事業は、要件に『原則として子がいない方』とあり、子に障がいや引きこもりなど特別な事情がない限り、契約できません。よくよく話を聞くとまだ親子で話されていないことが多く、まずはお子さんと話してくださいとすすめると、お子さんから『親の葬儀は自分がしたい』と言われて解決されるケースが大半です」と吉田さんは明かす。
契約時には、終活ならではのエピソードがある。「身寄りがなく、自分の死後をどうすればいいか心配で、夜も不安で眠れなかったという高齢者もいらっしゃいます。死後事務の契約をしたことで安心して過ごせると涙を流して喜ばれる方もいて、この事業の意義を実感しています。この事業を契約するために福岡市へ引っ越したいという方からの相談もありますが、その場合はまずは住み慣れた街で、終活に関する窓口に相談することをおすすめしています」(川﨑さん)。
死後事務の事業を始めて14年、スタッフは契約者1人ひとりの思いに寄り添い、それぞれのドラマを見守ってきた。
在宅での最期を希望する80代女性
大切にしているのは、本人の意思を尊重することだ。
「身寄りのない80代の女性は、入院せずに最期まで自宅で過ごしたいという希望がありました。私たちは病院に行ったほうが最期まで手を尽くせるのではないかという葛藤を抱えつつも、支援者たちと連携しながら環境を整え、ご本人が望む通りに在宅で看取りができたときは安心しました」(川﨑さん)
「また、少しずつ体が動かなくなるALSの70代の女性は、身体が思うように動かず、声もうまく出せない状態で契約の相談がありました。でも、エンディングノートに『自宅で死ぬ』と書かれていたので、担当医の協力を得て自宅で最期を迎えました。ご本人の人生ですから、思うようなゴールを迎えられるように精いっぱいサポートしています」(吉田さん)
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