福岡の「おひとり様の終活」に視察が相次ぐ背景 福岡市社協が自分らしい最期のためのサポート
福岡市では単身世帯が年々増加し、持ち家があっても死後事務のニーズは高い。そこで福岡市社協は2011年、死後事務を独立した事業として始めた。
まず手がけた「ずーっとあんしん安らか事業」は、福岡市内に住む70歳以上で身寄りのない人から事前に預託金(50万円~)を預かり、その人が亡くなったら希望に沿った葬儀・納骨、家財処分、公共料金等の精算などを行うというもの。当時は全国的にも非常に珍しかった。
しかし、預託金を捻出できない人もいたため、2017年に「やすらかパック事業」を追加。一時金なし、毎月定額の利用料(3000円~/契約時の年齢および健康状態による)のみで、直葬・納骨や家財処分を行ってきた。
さらに2019年にセンターを立ち上げたのには、大きく2つの理由があるという。
1つは、幅広いニーズに応えるため。「死後事務の事業をする中で、身元保証や入退院を手伝ってほしいなど、身寄りがないことによるほかの悩みも多く聞き、何かしら助言や支援ができればと考えました。それに、この事業は対象者が決まっているけれど、対象にならない方たちの相談にも応じたい。市民が安心して相談できる総合窓口になりたいと思ったのです」(吉田さん)。
そしてもう1つ、死後事務を行う事業者の広がりも背景にあった。「どんどん参入する団体が増えて、どこが信頼できるかわからなくて困っているという声を多く聞くようになりました。死後事務は一生に一度の大切な契約ですが、契約者をたくさん抱えたまま倒産した団体もあって……。私たちも実態を把握するのは難しいですが、団体を選ぶ際に確認したほうが良いポイント等を助言できればと考えています」(吉田さん)。
センターへの相談件数は年々増加
終活サポートセンターには、活動の柱が3つある。
すでにあった「死後事務委任」に加え、「啓発活動」として公民館などで出前講座や相談会を開催。2023年度は58件の依頼があり、延べ1239人が参加した。さらに「個別相談」では社協の窓口で終活全般に対応するほか、弁護士などによる専門相談も受け付けている。
センター主任の川﨑真帆さんは「地域での出前講座で特に関心の高いテーマは、エンディングノートの書き方、相続のことなどです」と話す。
センターへの相談件数は年々増え、2023年度は延べ1109件にのぼった。70・80代が75%で、女性が60%。相談内容は「死後事務」が圧倒的に多く、次いで終活の進め方などの「意思決定」、遺言の書き方を含めた「相続」と続く。
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