欧米が対イラン制裁、くすぶる原油高騰懸念
中東の緊張感が高まっている。核開発を進めるイランに対し、米国は昨年末に追加制裁法案を成立させた(猶予期間は最大6カ月)。
追加制裁の中身は、イラン中央銀行と取引がある外国金融機関を、米国の金融システムから排除するというもの。米国での業務に支障が出るため、日本のメガバンクなどは同中央銀との取引を停止せざるをえない。その結果、イランとの間で資金決済手段が絶たれ、同国から原油の輸入ができなくなる。
イランは原油輸出が実質的に唯一の外貨獲得手段。今回の金融規制によって、その輸出量を細らせ、経済的打撃を与えるのが米国の狙いだ。EUも対イラン強硬派の英、仏などが先頭に立ち、イランからの輸入禁止へ動いている。
日本にとってイランは、サウジ、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールに次ぐ原油調達先で、全輸入量の1割を依存。石油元売り各社は代替調達先の確保に動き、最大手のJX日鉱日石エネルギーは「サウジとの間で話を始めている」(木村康社長)。幸い、サウジを筆頭とするOPEC加盟国全体では、イランの輸出量を上回る追加供給余力があり、「時間さえあれば、代替調達自体は何とかなる」(大手元売り)という。
最悪のシナリオとは?
むしろ、石油業界が最も恐れているのは、追い込まれたイランが報復に出た時の影響だ。欧米による制裁への報復措置として、イランはホルムズ海峡の武力封鎖をちらつかせ、昨年末から、同海峡周辺で軍事演習を開始した。