エリート医師が「地方」に魅力を感じるワケ 医師の価値観の変容が始まっている
「働いてみて実感しているのは、地方ではとにかく患者さんとの距離が近いということ。患者さんのお店に買い物に行ったり、タクシーの運転手さんが昔の患者さんだったりするような場面は日常茶飯事です。こうした環境では息が詰まるという医師もいるかもしれませんが、患者さんとの関係性が強い分、自分の役割を自覚せざるをえない環境。『自分が医師としてどうありたいか』という思いが研ぎ澄まされ、勉強になります」(田上氏)。
「自分にしかできない仕事」を求める医師たち
田上氏が指摘するように、医師が足りていない地方ほど、医師一人ひとりの仕事の幅は広くなる。
登米市のような被災地では、地域の医療・介護を活性化させる立役者となってくれるイノベーター的な医師を行政も求めているし、2025年には団塊の世代が75歳以上となり医療需要が増大することもあって、経営変革の必要性に駆られている医療機関は全国的に多い。新規診療科の立ち上げや、他院との連携を推し進めるリーダーシップが取れる医師――田上氏の言葉を借りれば、「日々の診療」という枠にとらわれない「ユニークな仕事」をしてくれる医師の需要は、今後、社会全体で高まっていくことが予想される。
「医師にとって伝統的なキャリアパスは、『専門症例がたくさん集まる大病院で臨床スキルを磨く』『大学病院で出世して教授を目指す』というものかもしれません。しかし最近は、『臨床以外の道も自分にはあるのかもしれない』『自分にしかできない仕事をしたい』と考える医師も増えてきていると思います。
ソーシャルメディアの浸透もあって、医療業界の外の考えを知るのも容易になりましたし、個性的な活躍を見せている医師の情報は、狭い医療業界ではたちまち伝播する。医師のキャリアが多様化していると実感する場面は多いですね。逆に情報が多くなっている分、『自分が医師としてどうあるべきか』キャリアに悩んでいる人も増えているかもしれません」(田上氏)。
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